早稲田大学が初のVC設立へ 最大100億円ファンド

早稲田大学は10日、4月に同大学として初のベンチャーキャピタル(VC)を設立すると発表した。量子コンピューターやロボット、人工知能(AI)など主に大学の研究成果を生かしたスタートアップに出資する。1号ファンドは80億~100億円規模を想定し、夏にも運用を開始する。3~4年で20社程度に出資する。私立大学発のVCでは慶応義塾大学も2015年に立ち上げ、現在のファンド総額は合計150億円程度。
4月1日に設立を予定するのは早稲田大学ベンチャーズ(WUV)。出資に加えて会社の設立も支援する。早稲田大学は各研究室が持つ知的財産を公開し、WUVの投資家が事業化できそうな種を探す。WUVは会社経営の経験がある人材などを外部から招き入れることで、研究者との二人三脚でスタートアップの設立を支援する方針だ。まず22年内にも3社程度の設立を目指す。

投資分野は限定しないが、最先端の研究成果を生かした「ディープテック」が中心になるもようだ。理系だけではなく、スポーツや行動経済学など文系の研究成果を生かしたスタートアップにも出資を検討する。早稲田大学の田中愛治総長は10日に開いた記者会見で「特に発明などに優れた理工系の人材が経営者としても優れているとは限らない。(WUVには)スタートアップを経営の面から導いてほしい」と話した。
VCの共同代表には、東京大学発のVCである東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC、東京・文京)で10年以上の投資経験がある山本哲也氏に加えて、ドローン開発のACSLで会長を務める太田裕朗氏が就任する予定だ。WUVの投資判断に早稲田大学は関与しない方針。山本共同代表は「大学の判断が入ると利益相反になる」と説明する。
早稲田大学はこれまでVCのウエルインベストメント(東京・新宿)やビヨンドネクストベンチャーズ(同・中央)と提携契約を結んできた。スタートアップ投資を加速するため、自らVCを設立する。WUVには知財を積極的に公開するなど、これまでの提携VCより最先端の研究成果の評価や投資判断をしやすくする見込みだ。
私立大学が設立したVCとしては、慶応大学や東京理科大学が先行している。慶応大学発の慶応イノベーション・イニシアティブ(KII、東京・港)は15年に設立され、合計150億円程度のファンド総額がある。
大学発スタートアップは増えている。経済産業省によると、20年10月時点では約2900社と5年前の約1.6倍だった。大学別では326社の東京大学や227社の京都大学など国立大学が先行する。早稲田大学は91社で、私立大学では東京理科大学の111社に次いで2番目に多かった。最大100億円規模の大型VCの設立で、起業する教授や学生はさらに増えそうだ。
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