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「僕らが気づかない視点を」 資生堂など女性活躍を力に

SDGsが変えるミライ

女性が活躍できる環境をいかにつくるか。企業が長年向き合ってきた課題だが、多様性の時代になり重要性が一層増している。SDGs(持続可能な開発目標)は目標のひとつに「ジェンダー平等を実現しよう」を掲げる。女性の力を生かす企業の取り組みを追った。

20代の女性社員が口々に

「自分が管理職になるイメージが湧かない」「取引先のペースに合わせて働く必要があり、家庭との両立が大変」。9日、資生堂の会議室で20代の女性社員7人が口々に悩みを打ち明けた。相手は、鈴木ゆかり常務だ。鈴木氏は自身の経験を話した。そして、7月の次の研修で、理想的なリーダー像を話し合うことにした。

資生堂は女性社員が女性役員(奥)と悩みや課題を共有する研修を始めた

資生堂は昨年7月、20~40代の女性社員研修「SPEAK JAM(スピークジャム)」を始めた。ジャズやロックで即興演奏を意味するジャムと、果物を濃縮したジャムを掛けた。

執行役員などの女性幹部に対して、現場の社員が悩みや課題を直接話す。キャリアや働き方を考えるきっかけにする狙いだ。役員も現場の実態を肌感覚で知り、社内の風土や制度の改革につなげる。これまで約70人の女性社員が参加した。

リーダーはカリスマ的な男性?

「日々の業務に追われてキャリアを考える機会がなかったが、(研修で)女性管理職のイメージが湧いた」と入社4年目の社員は話す。鈴木氏は「リーダーというとカリスマ的な男性を想像しがちだが、多様でよいことに気づいてもらいたい」と語る。

           SDGs意識調査に参加する

同社は国内の全社員の約8割を女性が占める。取締役8人のうち女性は3人と、一般的な会社の平均に比べると多い。魚谷雅彦社長は「もっと取締役会とか役員とかに参画してもらい、僕らが気がついていない視点を持ち込んでほしい。多様化を、まず性別から始めるのは重要だと思う」と語る。今後も、性別や年齢、国籍を問わずに多様な人材が活躍できる環境づくりを進める。

子連れの「カンガルー出勤」

SDGsを進めるのは、東京を拠点とする大手だけではない。岐阜市に本社を置く三承工業。2018年に建設業者として初めて、企業や団体の取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を受賞した。高額なローンを組まなくても、ひとり親家庭などが取得できるローコスト住宅を提案していることなどが評価された。

ほかにも、日本で働く外国人専用の営業支店を開いている。外国人の雇用も増やしており、現在、従業員の10%が外国人になっている。

社員の連れてきた子供の相手をする西岡徹人社長(岐阜市の三承工業本社)

働き方の面で注力するのが、女性活躍の支援だ。社内に子供が遊べるスペースを設け、子連れで会社に来る「カンガルー出勤」を推奨する。結婚や出産をきっかけとする離職を食い止めることに成功した。産休・育休取得後の職場復帰率は現在100%。女性従業員比率は改革を始めた13年に14%だったが、現在は56%に達する。

「社内の人間関係も悪かった」

外に向けてSDGs経営の普及も図っている。西岡徹人社長と女性社員らは19年10月、女性活躍支援の一般社団法人「ウーマン・エンパワーメント・プラットフォーム(WEP)」を設立した。各地の講演やシンポジウムで三承工業の改革事例を紹介している。地域の防災強靱(きょうじん)化を進める事業にも力を入れ、岐阜市の小学校と共同で防災に関する授業を開いた。

壁に社員のSDGsメッセージを掲示している(岐阜市の三承工業本社)

西岡氏は「社会問題解決の岐阜モデルを展開したい」と語る。改革に着手した13年以前は「売り上げ最優先の『ブラック企業』で、社内の人間関係も悪かった」と振り返る。改革の手始めに毎朝自ら会社のトイレを掃除し、笑顔で従業員に話しかけた。「まずは職場の風土改革。最初は気味悪がられたが、少しずつ個々の社員が自分の意見を言える社内環境ができた」という。

イベントの登壇者が男性ばかり

「時代にキャッチアップしていないのはダサい」。独立系ベンチャーキャピタル(VC)のANRI(東京・渋谷)の佐俣安理代表パートナーは語る。同社は20年11月、総額250億円のファンドで、投資先の2割以上を女性が代表を務める企業にすることを決めた。

ANRIの佐俣安理代表パートナーは投資先の2割以上を女性が代表を務める企業にする方針を掲げる

きっかけは、あるVCのイベントのプレスリリースだった。登壇者は男性ばかり。それを見た女性の若手社員は「ありえない」と発言した。言われてみると、VCの投資家は大半が男性であることに気づいた。投資先も、同じような世代・経歴・課題意識を持った起業家になりがち。ANRIの投資先も、女性起業家の会社は5%程度だった。

佐俣氏は若手社員と話すにつれ、「本来半々のものが偏っているのは問題だ」と考えるようになった。そこで2割以上を女性起業家の会社に投資する目標を掲げ、今年2月に女性向けのキャリアスクールを運営するSHE(東京・港)に出資した。リクルート出身の福田恵里社長が17年に設立した会社だ。

キャリアスクールを運営するSHEにANRIが出資した

SHEはウェブデザインやライター、ウェブマーケティングなど、女性が時間や場所に縛られない働き方ができる24種類のコースを用意し、オンラインで受講できるようにした。入会金162,800円(税込み)と月額料金13,567円~ 16,280円を払えば、どの講座も好きなだけ受けられる。福田氏は「何の仕事が自分に合っているか悩む人は多い。色々なコースを試して、理想のキャリアを見つけてほしい」と語る。

「何人ものロールモデルに出会えた」

京都府在住の松本紗季さんはSHEを受講し、20年末に公務員を辞めてフリーランスのウェブデザイナーに転身した。もともと松本さんは「スキルが無いことに焦っていた」というが、身近に転職で目標になるロールモデルとなる人がいなかった。

SHEの講師は全て女性で、SHEの卒業生らがティーチングアシスタントとして学習を指導する仕組みもある。「SHEで何人ものロールモデルに出会えた」(松本さん)という。

ANRIの佐俣氏は「いま考えると、昔、女性に参政権がなかったことを『なぜ?』と感じる。未来から見ると、(男女格差のある)現在を『なぜ?』と思うだろう」と語る。女性の活躍を後押しする企業の取り組みが、社会を変える原動力になるはずだ。

(小山雄嗣、花田幸典)

SDGsが変えるミライ
BSテレビ東京は日経スペシャルとして、6月20日(日)午後9時から特番『SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査~』を放送します。本コーナーは放送に合わせ、SDGs関連記事をピックアップし、お届けいたします。

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