KDDI、実在都市の「メタバース」で連携 東急など

KDDIは9日、東急グループなど4社で「バーチャルシティコンソーシアム」を設立したと発表した。実在する都市をモデルにした仮想空間「都市連動型メタバース(仮想世界)」の個人認証や、収益分についてのガイドライン策定などを始める。東京都渋谷区との連携で培ってきた知見をもとに、国内外の他の都市にも取り組みを広げる。
メタバースは世界中の人々がアバターを使ってコミュニケーションを取ったり、一緒に仕事をしたりできる仮想空間を指す。1億人を超えるユーザーが集まるオンラインゲームが先行して構築を進めてきた。近年は新たなSNS(交流サイト)や消費空間としても注目が集まっている。
「バーチャル空間で10年後の渋谷を先取りしたり、リアルとの連動でバーチャル空間の価値を高めたりできる」。9日の記者会見に登壇した渋谷区の長谷部健区長は、都市連動型メタバースへの期待感をこう話した。
都市連動型メタバースでは参加者に「バーチャル住民権」を付与し、行政サービスを提供するといった取り組みを想定する。ただ、実現には厳格な個人認証が必要になる。参加者の諸権利を既存法が想定していない仮想空間内でどう保護するかなどの課題も多く残る。
バーチャルシティコンソーシアムは渋谷区の協力で運営してきた仮想空間「バーチャル渋谷」での経験を下地に、2021年度中に都市連動型メタバースを構築するための第1版のガイドラインを策定する。策定後はガイドラインをもとに、渋谷以外の別都市をモデルにした都市連動型メタバースを立ち上げる計画だ。
KDDIはすでに大阪府のバーチャル化を受託済み。その後も東京都新宿区など、集客力のある都市が対象に考えられる。コンソーシアムには経済産業省もオブザーバーで参加する。
KDDIは20年5月に「バーチャル渋谷」を立ち上げた。人と人の交流が難しくなった新型コロナウイルス禍でハロウィーン向けイベントを開催するなど活用し、これまでに100万人超が訪れたとする。