30代限定カラオケランキング 1位は難易度高いあの曲
新型コロナウイルス感染の拡大以来、楽しみ方が変わりつつあるカラオケ。世代別に見ると、今、人気があるのはどんな曲なのか。記事「20代限定カラオケトップ20 人気は皆で歌う曲よりも…」に続き、今回は世代を1つあげて30代に注目。カラオケ店「JOYSOUND」の2021年のデータを元に、音楽マーケッターの臼井孝氏が分析する。
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20代のカラオケランキングでは、ボカロPや"歌い手"などの動画系アーティスト、そして新旧様々なアニメソングが上位を占めたが、30代ではどんな特徴が見られるだろうか。

1位は、LiSAの「炎(ほむら)」。5位の「紅蓮華(ぐれんげ)」と共に、アニメ『鬼滅の刃』関連曲(前者は劇場版『無限列車編』主題歌、後者はテレビアニメのオープニングテーマ)だが、全年代のデータをまとめた総合ランキングでは4位と14位。30代のランキングのほうが明らかに上位に来ている。
さらに30代ランキングを男女別でみると「紅蓮華」は男性5位に対して女性4位、「炎」は男性4位だが、女性では1位と、いずれも女性人気が高いことが分かる。日経エンタテインメント!が発表するタレントパワーランキングの音楽部門で、LiSAは2年連続急上昇1位になったが(記事『米津玄師、タレントパワー初の音楽編首位 急上昇は…』)、このランキングスコアを見ても男性より女性のほうが高い。つまり、アニメ人気に加え、LiSA本人の同性からの支持も強いことが、30代でのカラオケ人気につながったのではないだろうか。
難易度の高い曲がトップ3に
2位はYOASOBIの「夜に駆ける」、3位にはAdoの「うっせぇわ」が入った。前者は、高速に駆け抜けるように歌う部分、後者には地声と裏声を巧みに使い分ける部分がそれぞれにあり、それゆえ動画系アーティストの作品として10代や20代の人気が絶大なわけだが、30代でも変わらず人気となっている。さらに驚くことに、40代でもこのトップ3は全く同じ。かなり難易度の高い、仲間とのカラオケで歌うには勇気がいる楽曲なのだが、これらが上位を占めるということは、1人カラオケが定着し、上級者だけがカラオケを楽しむようになったのだろうか。
または1人カラオケだからこそ、人の目を気にせず歌えるようになったということか。"おうちカラオケ"により、練習量が増えたということも考えられそうと、いろいろ想像が膨らむトップ3となっている。ちなみに、7位に入ったEveの「廻廻奇譚」(アニメ『呪術廻戦』オープニングテーマ)も、高速なロックチューンだ。
10位以下を見ていくと、11位に「Lemon」、16位に「感電」と、米津玄師の楽曲が2曲ランクイン。総じて繊細な描写による楽曲の世界観が人気の米津だが、この2曲は、米津作品の中では比較的歌いやすく、ともにドラマ主題歌(前者が『アンナチュラル』、後者が『MIU404』)ということもカラオケ人気につながっていそうだ。ちなみに、15位のKing Gnu「白日」もドラマ主題歌(『イノセンス 冤罪弁護士』)。これらの3曲は40代でもほぼ同じような順位にランクインしている。90年代から00年代、カラオケ人気曲の多くはドラマ主題歌が占めていたが、それを体感してきた30代・40代では、今なお密接に関係しているのだろう。
17位にはポルノグラフィティの「サウダージ」がランクイン。2000年のヒット曲で、もともとカラオケでも人気だったが、一発録りで人気のYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に登場したポルノグラフィティが同曲を歌ったことで、カラオケでのさらなるヒットにつながった。
4位の優里「ドライフラワー」、9位のKanaria「KING」といった10代・20代に人気の最新ヒットも歌われつつ、アニメやドラマのタイアップ曲の上位入り、さらには懐かしいJ-POPも見られる。このバランス感覚の良さが30代らしさなのかもしれない。
1968年生まれ。理系人生から急転し、音楽マーケッターとして音楽市場分析のほか、各媒体でのヒット解説、ラジオ出演、配信サイトの選曲(プレイリスト【おとラボ】)を手がける。音楽を"聴く/聴かない""買う/買わない"の境界を読み解くのが趣味。著書に「記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝」(いそっぷ社)。渋谷のラジオにてレギュラー番組『渋谷のザ・ベストテン』放送中。 Twitter @t2umusic
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