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健康よりおいしそうをアピール 植物由来食市場に挑む

「Yummy(But So Healthy)」「ヘルシージャンクフード」「睡眠投資」。消費者に価値を伝え、行動を促すキャッチコピーが武器だ=加藤康 撮影
日経ビジネス電子版

ポジティブに生活を楽しむメッセージを送る、独自のマーケティング手法で売り上げを拡大する健康関連商品の企画、開発、販売の「TWO」(東京・渋谷)。入浴剤事業からスタートしたが、フード市場にも本格参入し、植物由来食品の市場創出を目指す。

◇   ◇   ◇

加藤康 撮影

ピンク色のラズベリークリームがかかったドーナツに担々麺やバターチキンカレー……。若い女性客がスマートフォンで色鮮やかな料理を撮影する。

4月中旬、東京・渋谷ロフト2階にオープンした植物由来原料を用いたカフェ「2foods(トゥーフーズ)」。メニューに「まるでバターチキンカレー」とあるように、実は鶏肉を含め肉類を一切使わず、食材はすべて植物由来。担々麺も肉は大豆ミート。ドーナツにかかるラズベリークリームにも乳製品や合成着色料を使わない。客からは「大豆ミートとはわからなかった」と声が上がる。精製された白砂糖や合成着色料、保存料も使わない。

「健康」より「おいしそう」が先

特徴的なのは、人間のポジティブな感情に訴える独特のマーケティング手法だ。渋谷ロフト店でも目に飛び込んでくるのは大きな看板だ。「Yummy(But So Healthy)」。日本語にすると「おいしい(けど、とても健康的)」。一般に肉や魚を取らない菜食は健康的だが「我慢して食べる」イメージがあった。だが2foodsは植物由来食品を「おいしいから食べる」ものとしてアピール、価格も他の野菜中心の飲食店より2、3割抑えた。「ヘルシージャンクフード」というキャッチコピーも作り、消費者の「食べたい」思いを喚起する。

前出の客のように、2foodsのメニューを植物由来だと知らずに食べている客は多いが、店舗を手掛ける「TWO」の東義和社長は「それこそが私たちの目指している姿」と語る。

「TWO」は2015年末に設立し、入浴剤の開発、販売をメインに手掛けてきた。「BARTH」というブランド名で、血流を促進するとされる「重炭酸イオン」を含むタブレットタイプの入浴剤を販売。4期目となる20年8月期に売上高は11億円まで伸びた。

ここでもマーケティングを生かした。商品そのもの以上に「入浴を楽しむ」「健康的」といった前向きな価値を発信。「睡眠投資」というキャッチコピーを用い、睡眠不足の解消という後ろ向きな捉え方よりも、快眠により翌日のパフォーマンスを上げようと前向きなメッセージを送る。昨年には、都内の渋谷駅と新宿駅に、サンプルを貼り付けた屋外広告を掲出。狙い通りSNSでも話題を呼んだ。

東氏の独特のマーケティングの原点は、20歳のとき初めて勤めた出版社での仕事にある。当時は認知度が低かったケータイ小説でプロモーションを担当。テレビ局のプロデューサーに何度も掛け合った末、テレビ番組で取り上げてもらった。するとブームに火が付いた。プロモーションを手掛けたケータイ小説のシリーズは後に映画化された。この経験が東氏の自信につながり、PRは事業を拡大するうえで大きな力になると確信、「仕掛ける側になろう」と24歳でPR会社を設立した。

売上高は20億円程度まで伸び、株式上場も視野に入るほど成長した。一方、東氏はこの間、「異なる分野で自分の力を試したい」との思いから「TWO」を設立していた。19年、PR会社を事業譲渡し、TWOに注力。同年、2本目の柱を育てるため、フード事業に着手。人員も1.5倍に増やし、メニュー開発や出店準備を進めてきた。

TWOの売上高推移(注:21年8月期は見通し)

店で提供する50~60のメニューは、元コンビニのメニュー開発者、フードコーディネーターなど数人のメンバーが自宅のキッチンを使って試作を重ね、たった半年で完成させた。料理は10人程度の社員やアルバイトが手作りする。TWOが目指すのは「食」の総合カンパニー。すでにオンライン販売も始めたが、今後、外食店舗を一気に増やしてブランドの認知度を高め、中食や小売店での食品の販売へと幅を広げる計画だ。

コロナ禍の逆風は出店の好機

資金調達とPR会社の売却資金の一部を投入し、今後1年で10店程度を開業予定だ。ニーズの変化などを検証しながら3年で100店のオープンを目指す。街中ではコロナ禍で休廃業する飲食店が増加。そうした居抜き物件は狙い目だと言い、コロナ禍を逆手に取る。

4月には、カゴメと包括業務提携を締結。TWOのマーケティング力とカゴメの販売網や技術力を融合させ、植物由来食品市場の拡充を目指す。4月中旬に開かれた共同会見でカゴメの山口聡社長は「(植物由来食品は)認知度向上が大きな課題」とし、「(TWOの)特に若い層に向けたPR力に魅力を感じた」と話した。TWOは、カゴメ以外でも大手を含む国内外の企業との提携も模索中だ。

東社長は、SDGs(持続可能な開発目標)の浸透で、植物由来食品のニーズが高まるとみる。13年の国連食糧農業機関(FAO)の報告書は、50年に世界の人口は90億を超え、飼料に大量の穀物を使う既存のシステムでは食糧を賄えないと警告する。牛の飼育頭数が減れば、牛の消化器が出すメタンガスなど温暖化ガスの削減にもつながるとされる。

ここ数年で電気自動車(EV)の波が一気に広がった自動車業界のように、「フード業界でも植物由来食品がメインストリームになる時代がくる」と東氏は言う。時代の変化に合わせながら、マーケティング力を生かし市場を創出、拡大していく。

(日経ビジネス 中山玲子)

[日経ビジネス2021年6月7日号の記事を再構成]

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