オフィス空室率、続く膠着 5月の都心5区6.37%

オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が9日発表した5月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は6.37%と、4月に比べ0.01ポイント低くなった。低下は2カ月ぶり。新型コロナウイルス禍の収束を見据えて新規で借りる企業が増えている一方、大型ビルでの解約は依然多く縮小移転も目立つ。空室率はこの半年余り小幅な上昇と低下を繰り返し、膠着気味だ。

供給過剰の目安となる5%を16カ月連続で上回った。地区別では濃淡が見られ、新宿区や中央区の空室率は上がった半面、IT(情報技術)系などの企業集積が続く渋谷区は前月比0.38ポイント低い4.92%と20カ月ぶりに5%を下回った。
平均募集賃料は3.3平方メートルあたり2万319円と4月に比べ9円(0.04%)下がった。下落は22カ月連続。空室率が上昇する地域のビルオーナーを中心に空室を早めに埋めるため、以前より賃料水準を下げる動きが続いている。
都心5区のオフィス市場を巡っては、2020年にコロナ禍が始まってから大手企業を中心にオフィスの解約や縮小が相次いだ。旺盛なオフィス需要を背景にコロナ禍前に1.5%程度だった空室率は、1年半で5ポイント弱上昇した。歩調を合わせるように賃料も下落した。
それが21年末ごろから膠着状態に入っている。一つの要因が企業のオフィス需要の回復基調だ。オフィス仲介大手の三幸エステート(東京・中央)によると都心5区の大規模ビルの成約面積は5月にコロナ発生後として初めて5万坪(16.5万平方メートル)を超えた。
今関豊和チーフアナリストは「コロナ禍後の経済の本格再開を見据え、賃料水準が下がってるうちにより良い立地にオフィスを移す企業が目立つ」と話す。
半面、大企業のオフィス戦略の見直しによる解約や縮小の動きも続く。新規でオフィスを借りる企業も契約面積は以前より少ないことが多く、既存ビルで2次空室が出やすい地合いにある。面積の縮小傾向が続くようでは「市場全体の先行きは決して楽観視できなくなる」(オフィス仲介会社の47)との声もある。
これから年末にかけては23年完成の新築ビルに新規で入る企業などによるオフィス移転の発表が相次ぐ見通しだ。その際に面積を既存のオフィスより増やすのか減らすのか。オフィス市況の方向感を占う。
(原欣宏)
関連企業・業界