がんの新治療法「CAR-T」 骨肉腫や乳がんなどで治験
信州大学は9日、乳がんや子宮がんといった婦人科系のがんや骨肉腫を対象に、新たながんの治療法「CAR-T細胞療法」の医師主導臨床試験(治験)を始めたと発表した。CAR-T細胞療法は血液のがんを中心に有効性が確認されており、固形がんでの実用化が期待されている。

CAR-T細胞療法は、患者から採取した免疫細胞に遺伝子を入れ、がんへの攻撃力を高めるようにして体内に投与する新たな治療法だ。血液がんで実用化されているが、固形がんでは実用化していない。
信州大の治験は主に安全性を確かめる第1相の試験で、がん細胞の増殖にかかわる遺伝子「HER2」が働いており、標準治療が効かなかった骨・軟部肉腫や婦人科のがん患者、最大12人が対象だ。独自の製造技術を使い、学内の施設でCAR-T細胞を作る。投与後3カ月間にわたって安全性や効果を確認する。治験終了後も5年間は観察する計画だ。信州大は2021年に血液がんを対象に医師主導治験を始めており、固形がんでも実用化を目指す。
信州大はがん治療薬開発のブライトパス・バイオと共同でCAR-T細胞の製造法を開発した。一般的な手法と異なり、ウイルスを使わない。増殖しやすく、固形がんにも効果が期待できると研究チームは考えている。製造コストも一般的な手法と比べて10分の1以下になるという。
HER2陽性を対象としたCAR-T細胞療法は米国で先行しており、すでに第1相の治験で安全性などが確認されている。HER2は様々な種類のがんに関係しており「今後、効果と安全性が確認されれば、対象のがん種が広がるのではないか」と中沢洋三教授は話す。
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