NEC系、疑似量子コンピューターで配送計画

NECは9日、機器の保守サービスを手掛ける子会社のNECフィールディング(東京・港)が疑似量子コンピューターを導入すると発表した。10月から東京23区の配送計画を作成する業務に導入する。熟練者が2時間かけてつくっていた翌日の計画を、10分の1となる12分でつくれるようになるという。
システムは両社が共同でつくった。疑似量子は従来のコンピューターを使いつつ、膨大な選択肢から最適な解を探す「組み合わせ最適化問題」に特化した技術。配送計画は配送場所や運ぶ部品の種類、道路の混雑状況など様々な条件の組み合わせが考えられる。その中から効率が良い組み合わせを導き出すのに適している。
NECフィールディングは、都内の倉庫に約15万点の部品を持ち、約40台の車両で1日数百カ所へ部品を運んでいる。保守作業をする技術者の到着に合わせて顧客に部品を届ける必要がある。
現在は熟練者が長年の経験をもとに、複数の案件の部品をまとめて1台の車両で配送する効率的な計画を立てている。配送計画を作る業務は属人化している。業務の複雑さから後継者も育成しにくく、疑似量子コンピューターの活用を決めた。
本物の量子を使った量子コンピューターは業務で利用するにはまだ技術的な課題が多い。そこで両社は計算できる規模が大きく、使いやすい疑似量子コンピューターの実証実験を2月から進めてきた。
NECフィールディングは当面、翌日の配送計画策定に疑似量子コンピューターを活用するが、当日の配送計画策定への活用も検討する。過去のデータで試算したところ、配送車両の走行距離が最大で3割少なくなるという。NECは疑似量子コンピューターで配送計画を作る汎用サービスの販売を目指す。