ピッコマに漫画レーベル開設 少年画報社など5社と連携
韓国ネット大手カカオ傘下のカカオピッコマ(東京・港)は漫画アプリ「ピッコマ」内に、8月から出版レーベルの専用ページを設けた。「ヤングキング」を手掛ける少年画報社や新潮社、双葉社など出版5社と連携し、計8つのレーベルが参加する。紙の雑誌の部数減少に歯止めがかからない中、アプリ内でもレーベルを確保することで掲載作品の人気向上を支援する。

雑誌の連載作品の最新話を公開するのが専用ページの特徴だ。現役の連載作品だけでなく、過去の連載作もページ内に置くこともできる。すでにピッコマで公開している作品も含めて展開を始めた。
雑誌の中で、掲載作品やその話数を決めるのは出版社側だ。ピッコマは「1レーベルにつき20作品ほど公開してもらえればコンテンツが充実する」と期待を寄せる。
専用ページ内の作品の配置については当面ピッコマが決める。ただ2022年秋にも出版レーベル側に裁量を移管する方針だ。出版社が他社の漫画アプリ内に専門ページを持ち、編成権まで持つようになるのは珍しい。あらゆる出版社から作品を集めて掲載するピッコマは他の漫画アプリ同様、主に閲覧数や販売額によって作品の表示位置を決めてきた。今回の取り組みは従来の仕組みに一石を投じた格好だ。
ピッコマは自社制作作品に加え、国内外の出版社が権利を持つ約7万作品を配信する大手漫画アプリ。16年参入の後発ながら、21年の国内漫画アプリ販売額は695億円で首位だった。「1話売り」や、23時間ごとに1話を無料で読めるサービスを競合に先駆けて導入し、急成長した。
出版社にとって、ピッコマの集客力は魅力的だ。少年画報社が展開する漫画アプリ「マンガDX+」の累計ダウンロード数はアンドロイド版で10万以上だが、ピッコマは一日約450万人が利用する。自社のアプリを持たずウェブブラウザでしか電子漫画を展開していない出版社もあり、ピッコマで作品を露出するメリットは大きい。

電子漫画市場は拡大が続いている。出版科学研究所によると、21年の電子漫画(単行本とコミック誌)の販売額は14年の5倍弱の4114億円に増えた。一方で紙のコミック誌販売は14年の半分以下の558億円に落ち込んだ。
出版社はピッコマの集客力を活用できる一方で、主導権を握られるリスクを指摘する声もある。ピッコマは「出版社との共存を重視している。作家と作品を育む場であるレーベルを支える」と強調する。同社は専用ページに参加するレーベルを1年後に50、3年後には200への拡大を目指す。
(佐藤諒)
