抗ウイルス物質の合成酵素、糸状菌から発見 東北大学
東北大学の研究チームは抗ウイルス物質のフラボノイドを合成する酵素を糸状菌から発見した。植物が持つフラボノイド合成酵素は広く知られているが、別のタイプの酵素を特定した。この酵素を人工的に作らせることで、麹(こうじ)菌の作製にも成功した。感染症などの新薬候補になる化合物を新たに作り出すのに役立つと期待される。

フラボノイドは植物などに含まれる物質で、抗ウイルスや抗炎症といった作用がある。新たなフラボノイドを合成できれば、医薬品などの開発に役立つ。
研究チームは植物でフラボノイドを合成している酵素の構造などを手がかりに糸状菌のゲノム(全遺伝情報)を探索し、植物が持つものとは異なる酵素を新たに発見した。植物より少ない工程で別の原料からフラボノイドを合成する。英ディープマインドの人工知能「アルファフォールド2」で酵素の立体構造を解析し、反応に関わる部分も特定した。
発見した酵素などを麹菌に導入し、フラボノイドを合成できるようにもした。東北大学の浅井禎吾教授は「様々な種類のフラボノイドを合成するプラットフォームを構築できた」と話す。今後、フラボノイドの構造を変換する酵素を糸状菌や植物などから導入して、新たな化合物の合成につなげたい考えだ。