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スマートシティーテックへの投資額、過去最高 2021年

CBINSIGHTS
スマートシティー関連の技術開発に取り組むスタートアップ企業(スマートシティーテック)への投資が活発だ。新型コロナウイルス禍で人々の外出が減り、都市への投資にブレーキがかかるかとも思われたが、2021年の投資額は過去最高になった。CBインサイツがスマートシティーの潮流をまとめた。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期には、都市から多くの住民が流出し、「都市は廃れる」との観測が大勢を占めていた。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

だが実際には、コロナ禍でスマートシティーテクノロジー――センサーやその他のネット機器から収集したデータを活用して健康や治安、サステナビリティー(持続可能性)などの都市問題に対処する相互に絡み合ったインフラ網と統合システム(システム・オブ・システムズ)――の必要性が示され、その実装に向けた動きが加速した。

2021年のスマートシティー分野のスタートアップへの投資額は前年比43%増え、18年に記録した過去最高額をやや上回った。

投資家の資金の半分以上を受け取っているのは依然として「輸送」「サステナビリティー」分野の企業だが、「コネクティビティー(接続性)&サイバーセキュリティー」「政府&社会」分野への投資も増えている。

パンデミックが長期化し、社会は改めて対応を迫られているため、スマートシティーテックへの投資は今後も増える見通しだ。

今回のリポートでは、この投資増加に関する主な分析結果と予想される影響、ブームの原動力、最も注目を集めている分野について取り上げる。

分析結果と予想される影響

スマートシティーテック投資の増加により、IoT機器(ネット機器)のサイバーセキュリティーから都市計画、ネット接続基盤まで、都市がデータに応答して効率よく処理し、市民が必要とするものを提供できるようになる。

・データ共有テックはセキュリティー強化を重視するようになる。通信網やIoTネットワークはスマートシティーにとって不可欠だ。市民に自分のデータの提供を承諾してもらうには、セキュリティーが保証されていることが最も重要になる。例えば、英ベリンガー(Beringar)は安全なIoT基盤を活用し、センサーが収集したデータをクラウドに蓄積する。

・新型コロナやサステナビリティーへの取り組みが、引き続きスマートシティーテック投資の原動力となる。これにはアルゼンチンのコンソルシオアビエルト(ConsorcioAbierto)の不動産管理ソフトなど、新型コロナ感染者との接触を追跡して感染の可能性を通知するためにビル内で人の動きをモニタリングする技術などがある。商業ビルや集合住宅では、米ロジカル・ビルディングス(Logical Buildings)のプラットフォームのようなサステナビリティーや電気・ガス・水道の管理ソフトが、電気の調達の最適化やスマートメーターを使ったビルの管理によってエネルギー消費を削減し、住民の快適性を高める。

・輸送のディスラプション(創造的破壊)が継続する。中国の哈囉出行(Hello Trans Tech)や米ライム(Lime)のような自転車や電動キックスケーターのシェア事業は、引き続き投資家から関心を集めている。米マッキンゼー・アンド・カンパニーの予測では、2030年には1人乗りの軽車両「マイクロモビリティー」市場は米国だけで2000億~3000億ドル相当に拡大する。中国の文遠知行(WeRide)などの自動運転スタートアップや、電気自動車(EV)メーカー各社も輸送手段に地殻変動を起こしている。

市場の原動力

各都市はコロナ禍や気候変動で露呈した弱点に対処しようと取り組んでおり、スマートシティー分野のスタートアップへの投資額は増えている。

・コネクテッドセンサーの価格低下を受け、IoTソリューションが普及する。例えば、クラウドを活用したIoTアプリケーションはモノやサービスの状況、修理の必要性、治安の懸念を追跡するリアルタイムのデータを低コストで収集、分析、管理できる。

・ネットにつながる機器が収集、生成するデータが増えるため、データのプライバシーがさらに重要になる。新型コロナの濃厚接触の通知により、各プラットフォームで共有される個人データの量が増える。このため、米アーミス(Armis)のようなIoT機器のサイバーセキュリティー基盤を手掛ける企業に投資資金が流入し続けている。

・世界の気温が上昇するなか、都市に二酸化炭素(CO2)排出量削減を求める圧力が高まっている。都市はIoTソリューションなどのスマートシティーテックを活用してCO2排出量を削減し、エネルギー管理を改善できる。例えば、センサーは送電網や電気・水道などの供給をモニタリングし、更新する。

投資はどの分野に向かっているか

スマートシティーへの投資で最も関心を集めているのは「輸送」「サステナビリティー」で、投資件数は全体のそれぞれ34%、30%を占めた。どちらも人工知能(AI)や総合プラットフォームを活用してデータを共有し、都市や住民が直面している問題を解決する企業からなる広範な分野だ。

輸送:投資家は自転車や電動キックスケーターのシェアサービスや、交通テック、車両運行管理などのモビリティー(移動手段)テックに引き続き多額の資金を投じている。エストニアのボルト(Bolt)などのライドシェア(相乗り)アプリは投資家の支援を受け続けている。こうしたマイクロモビリティーテックは渋滞やサステナビリティー、移動の効率化など都市が直面している輸送問題の解決を支える。

サステナビリティー:世界各国の企業や政府は温暖化ガス排出量の削減目標を掲げ、都市の持続可能性を高める技術への投資増加をけん引している。サステナビリティーは以下のサブカテゴリーからなる。

・エネルギー管理:センサーやスマートメーターは商業ビルや集合住宅の配電網やエネルギー効率を最適化する。米ターンタイド・テクノロジーズ(Turntide Technologies)などはスマートビルのIoTネットワークを活用して空間の使われ方を検知し、これに応じて照明や温度などを調整する。

・ごみ管理:スマートごみ管理ソリューションは都市のごみ収集、輸送、処理コストを最低限に抑える。

・水の管理:スマートウオーター技術はこの不可欠な資源の調達、処理、供給の改善を支える。米Orbis Intelligent Systemsなどはセンサーで漏水を都市に自動で通知し、早急に修理できるようにする。

・環境のモニタリング:スマートシティーは無線センサー網を使って特定の地域の温度や湿度、大気の質などの環境データを常時収集し、分析する。これは人口密度が高い地域で大気汚染レベルを下げる際に特に重要となる。

コネクティビティー&サイバーセキュリティー:コネクティビティーはスマートシティーの有効性のカギとなり、その結果共有されたデータには強固なサイバーセキュリティーが必要になる。IoTとAI技術は様々なアプリをつないで利用者のデータを守る。例えば、サイバーセキュリティー基盤を運営するアーミスはパソコンやスマホ、冷暖房空調装置(HVAC)システムなどのパーソナル機器や産業ロボットを守る。

政府&社会:スタートアップ各社は都市の住民の健康と安全を推進する技術も開発している。この技術は緊急対応や治安、医療、警報の発令などに使われる。

市場の成熟度

スマートシティーテック市場は成熟しつつある。レイターステージ(後期)案件への投資増加がこれを示している。例えば、アーミスは21年11月、プライベートエクイティ(PE)ファンディングで3億ドルを調達した。一方、ライドシェアのボルトは22年、シリーズFで7億900万ドルを調達した。

・21年のシードステージの割合は21%と5年ぶりの低さにとどまった。

・ミッドステージ(中期)は前年の24%から27%に増えた。

・レイターステージはやや増えて5%になった。

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