世界のサイトで大規模障害 NYタイムズや日経電子版
順次復旧、コンテンツ配信サービスのfastlyが原因

世界のウェブサイトで8日午後6時50分ごろ、大規模なシステム障害が発生した。日本経済新聞社や読売新聞社、メルカリのほか、海外でも米ニューヨーク・タイムズや英フィナンシャル・タイムズなどのサイトが一時閲覧できなくなった。ウェブコンテンツを素早く配信するサービスを手掛ける米fastly(ファストリー)に障害が起きた。
8日深夜時点で多くのサービスは復旧している。
英国政府サイトや日本の金融庁や環境省でも一時サイトの閲覧ができなくなった。米アマゾン・ドット・コムや楽天グループの通販サイトなど幅広いサービスに影響が出た。各社のウェブサイトはファストリーのコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN、コンテンツ配信網)のサービスを利用していた。
CDNは利用者の近くである「エッジ」に動画や画像などの大容量データを配置し、そこにアクセスさせることによって本来のサイトに接続するよりも短時間で表示できるようにしている。

ファストリー側で何らかのシステム障害が発生し、各社のサイトに接続できなくなったとみられる。ファストリーは日本時間の午後8時ころ、同社公式サイトで「問題が特定され、修正が適用された」と復旧を済ませたと発表した。
ファストリーの広報担当者は日本経済新聞の取材に「障害の原因となったサービス設定を特定し、その設定を無効にした」と説明した。同社のジョシュア・ビクスビー最高経営責任者は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、サイバー攻撃などの可能性を否定している。
日本経済新聞社でも日経電子版やNIKKEI Asia、NIKKEI Financialが一時停止した。
データの効率配信システムが裏目に
8日に発生した世界規模でのシステム障害はクラウドを利用した特定のサービスへの依存のリスクを浮き彫りにした。今回原因となった米Fastly(ファストリー)をはじめ、グローバル化によってウェブサービスを素早くやりとりする新しいネットワークの仕組みが生まれている。社会インフラとなっているサービス維持にはバックアップとリスク分散の仕組みは必須となる。

コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN、コンテンツ配信網)サービスは、原本となるサイトの内容を複数のサーバーにコピーして配信し、アクセスを分散させる。アクセス集中による通信速度の遅延を避けられ、動画などの大量のデータでも通信量を抑えながら素早く送れるため、利用企業を急速に増やしている。
ファストリーは2011年創業のスタートアップ企業。世界各地に高速サーバーを配置して欧米を中心にネットワークを構成。日本では東京と大阪に拠点がある。CDNサービスはファストリーのほか、米アカマイ・テクノロジーズや米クラウドフレアが手がけている。また米アマゾン・ドット・コムなどのクラウド大手も、クラウドの顧客向けに同様のサービスを提供する。
ファストリーの障害は、国内でも多くの企業に影響が広がった。メルカリはフリマアプリ「メルカリ」のウェブサイトおよびアプリにつながりにくくなったことを確認し、午後7時13分にツイッターで告知。サイバーエージェントは午後6時49分から7時58分ごろまで同社のインターネットテレビ「ABEMA」がブラウザー上で利用できなくなっていた。アプリ版は通常通り利用可能な状態だった。
これまで大規模システム障害では2020年10月に東京でアマゾンのアマゾンウェブサービス(AWS)で障害が発生。利用するPayPayアプリなどの一部ネットサービスが一時的に利用できないという影響が出た。同年12月にも米グーグルのメールなどのサービスが世界の幅広い地域で一時接続できなくなどの障害もあったが、幅広い業種で世界的に広範にサービスが使えなくなる大規模障害は珍しい。
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