通販×SNS、世界で白熱 WalmartはTikTokと - 日本経済新聞
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通販×SNS、世界で白熱 WalmartはTikTokと

SNSを通じて興味を持った商品を購入するソーシャルコマース市場が拡大している。小売りやネット各社は新たな市場を取り込むため、投資活動やM&A(合併・買収)を活発化している。CBインサイツがソーシャルコマース市場の動きや地理的な傾向などをまとめた。

新型コロナウイルスの感染拡大により消費者は外出できず、多くの店が営業を休止したため、「ソーシャルコマース」が急成長した。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ソーシャルコマースとは、オンラインでの購入体験にソーシャルな要素(共同購入や個人間売買、チャット、動画など)を加えた電子商取引(EC)の一種だ。行動制限の解除後もソーシャルコマースを手掛ける企業への投資額は増え続けている。

より多くのブランドや小売りが、生中継動画による通販「ライブコマース」やチャット、商品との思わぬ出合い(発見)、コミュニティーによる影響など、SNS(交流サイト)体験の要素を取り入れている。

小売り各社はスマートフォンなどの端末を使って自宅で買い物する顧客とオンラインでつながろうとしており、こうしたテクノロジーはますます有用になっている。

2021年のソーシャルコマース関連テックへの投資額はすでに過去最高に達し、通年では70億ドルを超える見通しだ。けん引役はアジアに拠点を置く企業による「メガラウンド(1回の調達額が1億ドル以上のラウンド)」で、今年これまでの投資総額の約3分の1(17億ドル)を占めている。

一方、投資額の増加にもかかわらず、投資件数は20年通年の半分にとどまっている。

今回の記事では、主な分析結果と予想される影響、この活動の背景にある市場の原動力、注目の分野について取り上げる。

分析結果と予想される影響

初期段階のスタートアップへの投資と後期段階の企業へのメガラウンドが、ソーシャルコマース分野の発展を推進している。

このソーシャルコマースの投資ブームの主な分析結果と予想される影響は以下の通りだ。

・アジア域外でライブコマースが伸びている。(動画などで)取り上げられた商品を視聴者がすぐに購入できるプラットフォームが増えるにつれて、ブランドや小売りはライブ配信に目を向けるようになってきた。米百貨店大手ノードストローム、米メタ(旧フェイスブック)、米ECベリショップ(Verishop)はいずれも、インタラクティブなライブ配信プラットフォームの運営に乗り出している。

一方、米アルファベットは最近、動画投稿サイト「ユーチューブ」にソーシャルコマース機能を搭載するため、インドの動画コマースプラットフォームのシムシム(Simsim)を買収した。中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は小売業者にECシステムを提供するカナダのショッピファイとの提携やEC拡充に続き、ライブコマース機能を導入し、ユーザーはアプリ内で買い物できるようになった。

小売り最大手の米ウォルマートはティックトックで初のライブコマースを開催し、今後も続ける予定だ。ティックトックは自社プラットフォームでの小売り各社による販売を推進するため、米決済大手スクエアとも提携している。

・オンライン利用の拡大に伴い、アジアでは共同購入プラットフォームが引き続き躍進する。コミュニティーによる共同購入では各家庭の注文をまとめて一括購入するので、個人の購入価格は安くなる。コロナ禍により中規模都市や町の中低所得者層は引き続き厳しい状況にあり、これは特に重要だ。

中国の食品共同購入サービスの十薈団(Nice Tuan)は先日7億5000万ドル、同興盛優選(Xingsheng)は3億ドルを調達した。インドの同ディールシェア(DealShare)は今年の夏、1億4000万ドルを調達した。

・フリマアプリの普及は続く。消費者は節約志向を強め、中古品の人気が衰えておらず、従来のECにとどまらない個人間売買は依然人気を集めている。米ポッシュマーク(Poshmark)や英デポップ(Depop、米エッツィーによって買収)などのファッション系フリマアプリは、出品者に不要な衣類を処分する手段や、生計を立てる代替手段をもたらしている面もある。

市場の原動力

21年には特に共同購入サービスやフリマアプリで、アジアのソーシャルコマース企業によるメガラウンドが目立っている。一方、巨大テックを含むブランドや小売りは、ソーシャル販売プラットフォームや機能への関心を高めている。主な市場の原動力は以下の通りだ。

・新型コロナの感染拡大は、ライブ配信やSNSを介した非接触型ショッピングへの移行を促している。

・SNSと巨大テック各社はソーシャルコマース決済や技術開発に依然積極的だ。

・21年7~9月期の決算説明会でのソーシャルコマースへの言及回数が過去最高に達するなど、企業の関心は高まっている。

投資はどの分野に向かっているのか

投資件数で見てソーシャルコマースで最も関心の高い分野は「インフルエンサーとライブ配信」(投資件数全体に占める割合は48%)がトップで、「個人間売買」(15%)、「共同購入」(15%)が続いた。

・インフルエンサー&ライブ配信:投資額でみると、この分野が占める割合は他の分野よりも低いものの、20年9月から21年9月にかけて36%増えている。件数でみると、ソーシャルコマース投資はライブ配信スタートアップが圧倒的にけん引している。

注目の投資案件では、米ライブ配信ショッピングプラットフォームのワットノット(Whatnot)が最近、シリーズCで1億5000万ドルを調達してユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)の地位に達したほか、米ポップショップライブ(Popshop Live)がシリーズAで2000万ドルを調達した。

・個人間売買プラットフォーム:この分野はインドのミーショ(Meesho)によるシリーズE(調達額3億ドル)やシリーズF(5億7000万ドル)が全体を押し上げ、投資活動が活発だった。両ラウンドにはメタも参加した。

ミーショは対話アプリ「ワッツアップ」などのSNSを通じて売り手と買い手をつなぐ。メタは20年にインドでオンラインマーケットプレイス事業に乗り出し、ワッツアップから収益を生む方法を探っており、ミーショは非常に魅力的な投資先だった。

・共同購入:食料品の共同購入サービスは中国とインド、特に主要都市圏の周辺にある準大都市でブームになっている。

地理

16年以降のソーシャルコマースへの投資件数では、米国、中国、インドの3カ国で全体の半数以上を占めている。

・米国での投資は個人間のシェアや売買プラットフォームのほか、インフルエンサーによるマーケティングやコネクションに集中している。

・中国は共同購入とライブ配信のプラットフォームへの投資が目立つ。

・インドのスタートアップも購入できる動画や個人間売買で世界のトレンドをつかんでいるが、こうした分野への投資件数の割合は比較的低い。

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