川重など、日豪間の水素運搬実証成功 神戸市で式典

川崎重工業など7社で構成する技術研究組合は9日、世界で初めて開発した液化水素運搬船の実証が成功したことを受け神戸市内で式典を開いた。岩谷産業やJパワーなどが参画し、オーストラリアで石炭から水素を生成、液化して日本に輸送するプロジェクトに2016年から取り組んでいた。水素の普及拡大に向け、今後は大型輸送船や供給設備の実用段階に入る。
実証研究は豪ビクトリア州のプラントで低品位の「褐炭」をガス化・精製して液化し、運搬船で日本まで約9000キロメートル輸送するプロジェクト。川崎重工が開発した最大積載量75トンの水素実証船「すいそふろんてぃあ」は21年12月に神戸港を出航し、液化水素を積んで今年2月に神戸港に帰港。神戸市内の水素荷役施設に陸揚げしていた。

9日、水素荷役拠点「Hytouch神戸」で開いた式典には岸田文雄首相のほか、川崎重工の橋本康彦社長など参画企業の首脳ら約50人が出席。岸田首相は「エネルギーの安定調達と脱炭素化には水素社会の構築が大きなカギになる」と述べた。川崎重工の橋本社長は「水素の大規模輸送に向け、設備の大型化や商用化など早期実現に尽力したい」と将来的な水素事業の拡大に意欲を見せた。
燃やしても二酸化炭素を出さない水素は、脱炭素社会の切り札として有力視されており、日本政府は30年に年間300万トンの水素の調達をめざす。現状では世界で唯一運搬船を手がける川崎重工は、このうち22万5000トンを手がける考えだ。大量運搬で水素の値下がりを後押しし、足元で1ノルマル立方メートル(セ氏0度、1気圧での体積)あたり約170円の供給コストを30年に30円程度まで引き下げることをめざす。

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