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コマツのDX連合、ソニーも参画 建設現場変えられるか

コマツは17年に設立したランドログを進化させ、建設現場のDXを進める
日経ビジネス電子版

コマツが1日、建設現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)のための新会社「EARTHBRAIN(アースブレーン)」を始動させた。現場のデータをデジタル化し、分析することで、大幅なコスト改善などにつながるサービスを提供する。

母体は数年前に設立した、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」のオープンプラットフォームの会社だ。出資者を大幅に入れ替え、コマツのデジタル部隊のメンバーも一部移管する。

海外当局の認可を経てコマツが54.5%、NTTドコモが35.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズと野村総合研究所(NRI)が5%ずつを出す予定。資本金は150億円超で、かなり本気度は高い。

「インキュベーション(ふ化)の期間は終わった。新たに船出すべきだと思った」。2015年からコマツが進める建設現場のデジタル化サービス「スマートコンストラクション」を最前線で率いてきた同社の四家千佳史執行役員は、新会社設立の意図をこう説明する。

コマツのデジタル化の取り組みを加速させるという四家氏

新会社の母体はコマツが17年に設立したランドログ(東京・港)だ。デジタルのスピード感を実現するためにオープンプラットフォーム戦略の一環として設立していた。

新会社に出資している顔ぶれは、過半出資がコマツなのもドコモが出資しているのも従来と変わらない。だが、前回出資していたシステム開発のSAPジャパンやオプティムは引き揚げた。新たに加わったのが、ソニーやNRIだ。

ソニーは画像センサーに強みを持つ。土量の変化などを認識する「目」の役割を果たす。NRIはデジタル化のソリューション開発などのノウハウを提供する。NRI幹部は「(通信やセンサーなど)フィールドの違った企業と組むことで、建設業界でのサービスの充実につなげたい」と話す。

最大120万人が不足

「建設現場のデジタル化は後戻りできない。加速させないと」と、四家氏は危機感を募らせる。

高齢化が進み、若年の労働者が不足している。建設技能労働者は数年以内に、必要数の3分の1に当たる最大120万人が足りなくなるとされる。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の建設現場で働き方改革が求められている。

だが、スピード感が必要なデジタルと、100年前から取り組んできた安全・信頼重視の建機のモノづくりは、ベクトルは一緒でも、進め方のスピード感は正反対だ。

四家氏はコロナ禍で小川啓之社長と議論を進める中、「コマツ以外の技術を持つ会社と共同出資し、ビジネスを加速させるべきだ」と、開発を「出島」で強化する結論に至った。ランドログ設立時にも同じ議論があったが、コロナ禍という要素が加わり、速めたほうがいいとの判断もあっただろう。

コマツはDXサービスのサポートも充実させる

今後、コマツ本体では、半自動で操作しやすいICT(情報通信技術)建機などの車体を開発する。新会社にはスマートコンストラクションのアプリなどの開発メンバーや、サポート関連の人員を振り向ける。新会社は22年3月までに120人規模にする計画だ。米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス」を導入済みで、アプリ開発の素地を整えた。

新会社が進めるのは、これまで建設業界で当たり前とされてきた工程をなくしてしまうことだ。

20年にコマツが拡充したサービスがそのヒントになる。同社は、15年から手掛けてきたスマートコンストラクションのサービスを「DXスマートコンストラクション」に衣替えし、メニューを10以上へと大幅に増やした。日本にとどまらず欧米5カ国でも提供し始めている。

ドローンなどで撮影して施工状況を1日ごとに把握したり、仮設道路の3D(3次元)を簡単に作図できたりする。コマツ以外の油圧ショベルも電子化して仕事量などを把握できる「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」の販売や、経営者向けに現場でどのくらい工事が進んでいるか、複数の現場の進捗状況や利益率、安全管理状況、工事の終了時期などをスマートフォンで確認できるサービスも提供している。

コマツのソフトでは周辺地形や構造物との位置関係も3Dであらゆる角度から確認・計測でき、工事前に現場をイメージできる

上武建設(奈良県生駒市)など、すでに日米欧合わせて30社程度と効果を実証中だ。現場監督からは「手戻り(工事のやり直し)が少なくなった」などといった声が上がっている。四家氏は「工事全体のコストの1割以上は削減できる」と話す。

通常の工事では、例えばドイツの高速道路の場合、入札から落札までに90日かかり、さらに施工計画作成にも45日、本施工に630日の期間を要する。プロセスをデジタル化することで、入札前に精度の高い計画を立てることができ、受注後の施工計画作成の45日分が丸ごと必要なくなる効果などが見込めるという。

コムトラックスの成功、再びなるか

コマツがデジタル化に一層注力する背景には、激化するグローバル競争がある。油圧ショベルで世界最大の市場である中国では、現地メーカーが強く、「SANY」ブランドの三一重工が3割近くのシェア(台数ベース)を持つ。コマツは直近で2%前後しかない。

かつて日本の建機メーカーは中国のトップシェアを占めていた。日本が誇る産業分野の一つだが、中国での勢いは、今は見る影もない。コマツのシェア2%というのは、同社がシェアトップだった09年の6分の1以下とみられる。同社の建機売上高における中国の割合は1割弱だ。

それでも、市場が伸びていればまだいいが、21年4~5月は中国政府の自主抑制もあり、現地の建機稼働率は前年同月を下回っている。

心配の種はアジアの他国に広がっている。三一重工など中国勢は、コマツが強みとしてきたタイやインドネシアなどでも勢力を強めている。デジタルの活用や手厚いサポートを生かした需要の開拓が急務だ。

デジタル分野ではグローバルで、世界最大手の米キャタピラーと競っている。キャタピラーもドローンを活用して現場を効率化するといったサービスを提供しており「デジタルという分野の特性もあり、なかなか提供できるサービスで差をつけづらいのでは」(建機部品の大手幹部)との声もある。

コマツの22年3月期の売上高見通しは前期比13%増の2兆4690億円。建機の売上高では中国やオセアニアを除く、特に北・中南米やアジアで需要が回復する見込みだ。

同社は00年代の坂根正弘社長時代、世界中の建機の居場所をIoTで把握するシステム「コムトラックス」を導入したことなどで巻き返し、赤字からV字回復を成し遂げた。時代は変わり、競争のスピードは速まっている。大手4社が組む今回の新会社を機に、世界の現場のニーズを捉えていけるかどうかが、成長の鍵を握りそうだ。

(日経ビジネス 西岡杏)

[日経ビジネス電子版 2021年7月8日の記事を再構成]

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