東芝、英投資ファンドから買収提案 関連記事まとめ読み

東芝が英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズから買収を提案されました。CVCは1株5000円での買い取り価格を提案し、直近の株価に約30%のプレミアム(上乗せ幅)を加えました。背景には東芝とアクティビスト(物言う株主)との対立があります。東芝は2017年の経営危機下、約6000億円の大型増資を実施し、多くのアクティビストが引き受けました。両者の蜜月の関係は長く続かず、足元では企業統治(コーポレートガバナンス)や資本政策などを巡り、対立を先鋭化していました。
東芝は15年の不正会計問題で経営が混乱し、米原子力発電機器子会社の巨額損失などで上場廃止寸前まで追い込まれました。非常事態にあった18年、東芝の経営トップに招かれたのが、三井住友銀行で副頭取を務め、CVC日本法人会長だった車谷暢昭氏です。東芝が外部からトップを招いたのは、土光敏夫氏以来、53年ぶりでした。
車谷氏率いる東芝は、白物家電やパソコンなど不採算な事業を売却し、発電機器やエレベーターなど社会インフラ分野に経営資源を集中しました。構造改革にめどをつけ、データサービスを軸にした新たな成長戦略にも乗り出しました。
アクティビストとの対立が深刻化すれば、こうした成長戦略の実行にも影響が出る恐れがあります。東芝に対する買収提案の狙いは、株式の非公開化でアクティビストとの対立を解消し、経営の意思決定を速めることです。

ただ、東芝買収は一筋縄ではいきません。原子力事業を持つ東芝は20年に施行した改正外為法で重点審査の対象となっており、財務省と経済産業省が事前審査することになります。半導体や防衛関連の技術もあり、安全保障の観点から技術流出の恐れも懸念されます。
意思決定の透明性も論点になります。車谷氏は過去にCVC日本法人会長でした。東芝の社外取締役の藤森義明氏は現在、CVC日本法人の最高顧問を務めます。東芝首脳とCVCの関係が、今回の買収提案を巡って、利益相反の疑義を抱かれかねない側面があります。
様々な思惑が交錯し、企業統治や経済安全保障のあり方の議論も呼ぶ東芝への買収提案。これまでの「東芝買収提案」の記事をまとめました。
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