メタバースビジネス動き出す アバターやファッション
先読みウェブワールド(藤村厚夫氏)
SNS(交流サイト)最大手の旧フェイスブック(現メタ)が、社名を変えてまで注力しているのが、仮想空間を意味する「メタバース」だ。メタがこの分野に本気で取り組んでいることは前回このコラムで紹介したとおりだ。

では仮想空間の一体なにがビジネスになるのか。なにしろ、利用者同士の交流はもちろんのこと、ゲーム、教育、イベントやコンサートなどのエンターテインメント、さらには遠隔会議などと、仮想空間に期待される応用範囲はきわめて広い。そのどれが金を生む鉱脈となるのか。だれも確かめきれないままゴールドラッシュが出現したというのが現状だ。
まず、仮想空間用のアプリやハードウエアの販売がビジネスとして動き出した。次に、「フォートナイト」や「ロブロックス」などのゲームで、アイテム課金が進んでいる。そんななか、脚光を浴びているのがアバターとその関連アイテムのビジネス化だ。
アバターとは、仮想空間における利用者の分身だ。利用者はアバターを通じて仮想空間に参加し、他人のアバターと交流したり、現実ではありえない奇想天外な冒険を体験したりするのだから重要な要素だ。
例えば今年8月、ゲームの「フォートナイト」内でアリアナ・グランデが、大規模なコンサートを開催した。このイベントでは、グランデがアバターとなって歌い踊るのはもちろん、参加者もアバターとしてアリアナとともに踊った。次々と生み出される人気仮想空間に参加する著名人や各利用者は、人気や変身願望を満たすために、自分をあらわすアバターづくりに凝り、お金をかける時代がやってこようとしているのだ。
アバター開発をめぐっては、メタはもちろん、大手から新興企業まで続々と参入している。ツイッターがつい最近、複数の仮想空間に対応できるアバター開発の「フェイスモジ」に出資を行って驚かせた。さらに「業界最大手」をうたうジーニーズは、10月にパリス・ヒルトンにアバターを提供することを発表。ヒルトンは著名デザイナーの衣装をまとったアバターで、仮想空間「ディセントラランド」が開催した「メタバースフェスティバル」に出演して話題となった。

アバターが身にまとうファッションアイテムのデザイン、開発にも熱い関心が寄せられている。例えば「グッチ」はVRチャットやロブロックスのアバター向けにデジタルスニーカー「グッチ・バーチャル25」をこの春に発売した。
この動きは、単なるアイテム課金ビジネスでは終わらない模様だ。ファッションアイテムなどが、仮想空間内で高値転売されるのを期待して、ディセントラランドはブロックチェーン技術を用いた独自通貨を発行している。そこでは仮想空間上の土地の登記や転売までできる。デジタルアート作品のオークションも実現する動きがある。
コロナ禍で外出を自粛している間に、人々は仮想空間で自由自在に行動する方法を身につけたようだ。物理的制約の少ない仮想空間に、現実で起きているようなビジネスを次々と導入すれば巨大ビジネスに発展する、そう夢見る人々がいま急増している。