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自動運転スタートアップ投資が急増、過去最高に

CBINSIGHTS
期待が先行し、普及がやや遅れている自動運転だが、2021年はスタートアップへの投資が急増し、過去最高水準にある。米では州レベルで実験が続いているほか、中国でもスタートアップの資金調達が目立つ。特に人手不足を背景に物流トラックなどの分野のほか、自動運転に使うセンサーの需要が拡大している。直近の動きをまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

自動運転技術の実用化は予定よりも遅れているが、投資家はブレーキを踏んでいない。

この技術の開発を手掛ける企業による2021年の資金調達額はすでに120億ドルを超え、米クルーズ(Cruise、21年の調達額28億ドル)や米ウェイモ(Waymo、25億ドル)が先頭に立っている。このペースが続けば、21年通年のこの分野への投資額は前年の2倍以上に達するだろう。

今や自動運転システムを一括提供するリーダーが台頭し、この技術は転換点に達しつつある。主要各社は自動運転技術を活用した「ロボタクシー」の試験運用や先進運転支援システム(ADAS)などにより、自社製品を商用化し始めている。

今回のリポートでは、この成長を分析した結果と予想される影響、投資急増の原動力、最も注目度の高いカテゴリーについて取り上げる。

分析結果と予想される影響

自動運転技術の大規模な商用化が近づき、こうした機会を待ち望んでいた投資家が、この分野に巨額の資金を投じている。

21年の投資急増についての主な知見と影響は以下の通りだ。

・乗用車の完成車メーカー(OEM)が自社の自動運転プラットフォームに搭載する自動運転システムを選定し始める。多様なセンサーや人工知能(AI)、機械学習、データのラベル付けを手掛けるスタートアップはそれぞれ、自動運転車に役立つ技術の開発を進めている。完成車メーカーはサプライチェーン(供給網)を簡素化するため、こうした技術を一括提供できる大手に目を向け、自らは自動運転システムの新たな1次サプライヤーとして役割を果たすようになるだろう。

・自動運転技術のさらなる商用化に目を光らせておく。ウェイモや米オーロラ・イノベーション(Aurora)などは今年、ロボタクシーの試験運行を拡大すると発表した。自動車メーカー各社は乗用車にADASを搭載している。自動運転技術を搭載した製品を展開するライドシェア企業や完成車メーカーも増えるだろう。

・米国は自動運転市場でのリードを保つため、この技術についての法整備を速やかに進める必要がある。中国の規制当局は19年、ロボタクシー開発会社に国内の一部都市で一般客を乗せた運行を認めた。中国の自動運転システムへの投資額はそれ以降急増し、開発は加速している。

市場の原動力

投資家や企業は自動運転技術を大規模に商用化する時期が訪れたと判断している。理由は以下の通りだ。

・自動運転を可能にするハードウエアとソフトウエアが転換点に達し始めている。各社は今や数百万マイルの走行データを持つAIプラットフォームや、価格が安く頑丈なライダー(物体などを検知する高性能センサーの一種)やレーダー、カメラを開発しつつある。

・トラック業界の人手不足や物流各社が米アマゾン・ドット・コムに対抗する必要性から、長距離トラックや物流拠点から家庭までの「ラストワンマイル」配送を担う自動運転車の商用化が急務になっている。

・新型コロナウイルスの感染拡大により道路を走る車の数は減ったが、20年の米国での乗用車事故による死亡者数は引き続き増加した。投資家やスタートアップ、自動車メーカーは人間の運転手よりも安全な自動運転車の展開を強く望んでいる。

・米国では自動運転車に関する連邦法は制定されていないが、ウェイモやクルーズ、オーロラなどロボタクシーやトラック、乗用車に対応する自動運転システムの開発を手掛ける企業は、一部の都市や州で人やモノの輸送に乗り出す許可を受けている。米ニューロ(Nuro)の自動配達車など類似の解決策に取り組む企業も米カリフォルニア州で自動運転の配達車を展開する認可を得ている。

投資はどの分野に向かっているのか

「ハードウエア&センサー」「トラック向け自動運転システム」「乗用車向け自動運転システム」は投資家が注目している分野だ。この3つのカテゴリーは20年以降の自動運転技術への投資件数の78%を占めている。理由は以下の通りだ。

・ハードウエア&センサー:投資家はハードウエアとセンサー技術のスタートアップ、特に自動運転の「認知」に不可欠なライダーシステムの低コスト化を果たした企業に多額の資金を投じている。ライダーのスタートアップによる特別買収目的会社(SPAC)を活用した上場はこの2年で7件に上り、計20億ドル以上を調達している。

・自動運転システム(乗用車向け&プラットフォーム非依存型):このカテゴリーの企業は自動運転の乗用車、ロボタクシー、トラックの開発の先頭に立っている。ウェイモ、クルーズ、中国の滴滴出行(DiDi、ディディ)、中国の小馬智行(Pony.ai、ポニー・エーアイ)、オーロラの調達総額は200億ドル近くに上る。

・自動運転システム(トラック向け):高速道路は市街地よりも間一髪の状況が少ないため、自動運転トラック技術の開発に特化している企業は近く商用化できると考えている。さらに、トラック業界の人手不足やサプライチェーンにおける経済的利点から、トラックの早急な自動化はビジネス面でも理にかなう。中国系の智加科技(Plus)はこのカテゴリーの先頭に立っている。同社は最近、SPACを活用して上場する方針を発表し、5億ドルを調達した。

市場の成熟度

自動運転分野への投資件数に占める「シード/エンジェル」ラウンドの割合は16年以降、70%減少している。一方、「シリーズB」以降のラウンドの割合は186%増えている。これは投資家が投資先の選択と集中を進め、市場が成熟しつつあることを示している。この分野に新規参入した企業や創造的破壊をもたらす企業は、他社に買収されるか大手に負ける可能性が高くなるだろう。

市場が成熟し続けているため、企業はこの分野で業務を遂行するためにさらに多額の資金調達を必要とし、草創期からの投資家は投資資金の回収を求めている。その結果、自動運転企業の上場、特にSPACとの合併を通じた上場が相次いでいる。

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