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アステラス、治験中断の遺伝子薬開発6年遅れ

アステラス製薬は9日、開発を一時中断していた遺伝子治療薬候補について、開発を継続する方針を明らかにした。米国での臨床試験(治験)で死亡者が出たため米当局から差し止められていた。今後、開発再開へ詳細を詰めるが、承認申請は早くて2026年と当初計画から約6年遅れる見込み。技術的に成熟していない分野で開発期間が長引けば投資回収が見込めなくなるリスクもはらむ。

9日、研究開発戦略に関する説明会で安川健司社長が明らかにした。新薬候補は筋力などが低下する難病「先天性ミオパチー」の一種を対象とする遺伝子治療薬を目指しており、治験では呼吸機能や運動機能が改善する有効性が認められる例が複数あった。だが、治験参加者が計4人死亡。21年9月に米食品医薬品局(FDA)が治験差し止めを指示していた。

アステラスの分析によると、肝臓に関わる既往歴が死亡事例と関係している可能性が高いという。チーフメディカルオフィサーのバーニー・ザイアー氏は「重篤な症状はあるが、臨床的な改善が確認できている」と話し、製剤技術の改良や投与対象者の絞り込みなどによって実用化を目指すとした。

ただ、開発の遅れは免れない。治験再開に必要なFDAとの協議は22年7~9月を予定し、実際の再開は23年以降と見込む。米国での製造販売承認の申請は早くても26年を想定する。

アステラスは20年、約3200億円を投じて買収した米オーデンテス・セラピューティクスから同候補品を引き継いだ。買収時点で予定していた20年中の承認申請から6年遅れる計算になる。

収益見通しも計画修正を余儀なくされる。21年5月時点では年間売上高を最大1000億円と見込んでいたが、投与対象者が限定されれば下方修正を迫られる可能性は高い。岡村直樹副社長は同日、「(同治療薬候補の)無形資産の価値減少の有無について、22年3月期中に減損テストを実施する」と指摘。今後、減損損失を計上する可能性がある。

同候補品の無形資産は444億円(21年12月末時点)。21年3月期にも死亡例による治験差し止めで投与対象の絞り込みなどをしたため減損処理をした経緯がある。オーデンテスの買収直後にあたる20年3月期の有価証券報告書では約1000億円だった。

収益見通しが不透明でもアステラスが開発に力を注ぐのは、遺伝子治療薬が収益拡大が期待できる次世代薬の筆頭格だからだ。英調査会社エバリュエートは26年の世界市場は20年比約16倍の160億ドル(1兆8500億円)に拡大すると予測する。

19年に実用化されたスイス・ノバルティスの脊髄性筋萎縮症向けの遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」は21年の売上高が13億㌦を超える。

一方で、遺伝子治療薬の開発では米スタートアップなど他社でも副作用事例が報告され、製剤の中核とされる「ベクター」技術の未成熟を指摘する声も出ている。

アステラスで遺伝子治療研究責任者を務めるマット・プレッチャー氏は「当社が取り組むタイプのベクターは肝臓への負担がかかるという課題がある」と認めつつも、「遺伝子治療のために最も有望で効率的な技術であり、現在のベクターを改良するとともに、次世代技術の開発も進める」と話す。

アステラスは26年3月期までに遺伝子や細胞を使った先端医療分野へ約2000億円の研究開発費を投じる方針。26年3月期までは抗体医薬品などで売上収益の成長が見込めるが、その後の成長ストーリーは未知数だ。開発の遅れを補うほかの候補品で進捗を示す必要がありそうだ。

(赤間建哉)

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