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リクルートHD社長「ボタン1つで就職できる世界に」

出木場久征(いでこば・ひさゆき)氏 鹿児島県出身、45歳。1999年リクルート入社。旅行領域や美容領域をはじめ、数々の情報誌のネットメディア化、オンライン予約一般化などデジタルシフトをけん引。2012年に執行役員就任後、買収を推進した米インディードの会長に就任、13年よりCEOとして経営を執行。19年に取締役就任、20年より副社長執行役員を兼任し、21年4月から現職
日経ビジネス電子版

リクルートホールディングス(HD)は2014年の上場時に「20年に人材領域でグローバルナンバーワン」の目標を掲げた。世界人材大手であるスイスのアデコと売上高は肩を並べ、時価総額は1兆2500億円程度のアデコに対してリクルートHDは9兆5000億円(6月4日終値ベース)と圧倒する存在になった。名実ともに人材領域で世界一となったリクルート。目指すその先の姿を、4月から社長に就いた出木場久征社長兼CEO(最高経営責任者)に聞いた。

――米人材テック企業のインディードを買収し、リクルートHDはグローバル企業に転換しました。2020年に人材領域で世界一とする目標は達成されたと思います。

「人材領域にはまだまだ改革が行き届いていない部分があります」

「例えば、優秀な人材と、それを求める企業を結びつける手法の1つにヘッドハンティングがあります。ただ、世界でのヘッドハンターによる転職は、わずか数%にすぎません。エリート層に限られている。テクノロジーを活用して、ここを変えていきたい」

「人類の歴史は様々なものがテクノロジーの面で進化しています。かつては、特権階級の人しか馬車や駕籠(かご)に乗れなかった。それが、今や多くの人がクルマに乗れるようになりました」

「私が就職した1999年当時は、仕事の受注を登録するための端末は部署で共有する1台のみでした。新人は先輩が打ち込むのを待たなければならなかった。管理職にしか携帯電話が支給されない時代もありました。それが今や、パソコンとモバイルの2台持ちも当たり前の時代になりました」

「時代の進化によって、特権階級の人しか得られなかったものが、一般にも行き届くようになった」

「ただ、転職活動の構造は50年近く変わっていません。目指すは誰でもボタン1つ、ワンクリックで仕事に就ける世界の実現です。インドなど人口が多い国では、人気の高い企業の求人に、とてつもない数の応募が殺到します。それをどう効率的にマッチングしていくか。挑むべき課題はたくさんあります」

――求人広告が主体だった人材市場で、検索型の人材マッチングサービスのインディードは人材業界に革命をもたらしました。効率化に向けて、ほかにどのような技術を導入しているのでしょう。

「かつて買収した企業が保有する音声認識技術を、仕事別の簡単なテストに活用しています。例えば、米国のコールセンターでのマッチングです」

「モバイル機器を通して求職者に話してもらい、きちんとした英語を話せるかを事前に自動でチェックできる。コールセンターで採用するうえでは重要なスキルですが、それがあるかが応募後に面談する時点まで分からない。事前に分かれば、双方にとって効率化できます」

「細かいですが、こうした技術を活用することで、仕事探しをとにかく簡単にしていきたい」

――IT化が遅れていた人材領域は、まだまだ伸びしろがある。既存の人材大手も検索型に力を入れてきています。

「人工知能(AI)で一番重要なのは機械学習させた量です。データ量が多ければ多いほどマッチングの精度が上がります。精度が上がれば企業や個人の利用が増えます」

――米GAFAM(グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)のような巨大テック企業の参入もありますが、あまり本腰を入れていない印象を受けます。

「他社のことは分かりません。人材業界はニッチな世界です。志望するエンジニアがそもそも少ないのかもしれません。ベンチャーキャピタル(VC)も『HRテクノロジー』事業の企業にはあまり投資をしませんね」

――なぜですか。

「成長スピードが遅いからだと思います。劇的な効果をすぐに出しにくい。費用対効果を考えると、投資には向いていないのかもしれません。人材領域はニッチではありますが、衣食住を支えるためにも仕事は不可欠。とても大事な領域です」

――2012年にインディードを買収してから、一気にグローバル化が加速しました。急速な社内の変化に対して、戸惑う社員もいるのでは。

「リクルートの強さと言えば営業力といわれますが、私は一番は『変える力』ではないかと思います」

「時代に合った良いプロダクトを世に出していく。かつて、大学の掲示板にしかなかった採用情報を本にした。出版もテクノロジーだったわけです。その時代に応じて力を発揮できる場所がある。そこは変わっていない」

――出木場さん自身、旅行情報誌の『じゃらん』や美容情報誌の『ホットペッパービューティー』のオンライン化をけん引してきました。

「紙の編集をずっとやってきた人たちにも、当然プライドはあります。『平家ガニと松葉ガニの違いが分からないような奴はダメだ』とも言われました。ただ、自由に変革できたのは、紙の編集部とは別の組織として新たに立ち上げてもらえたのが大きい」

「ネットの責任者をしたのはまだ20代でしたが、誰も何も言う環境にない。ある意味、ファウンダー(創業者)と同じような環境で自由にできました」

「そういった意味で、リクルートは今も変わっていません。優秀な人に、彼らが好きなことをやってもらう。それが新たなサービスを生み出す原動力になるのですから」

(日経ビジネス 白壁達久)

[日経ビジネス電子版2021年6月4日の記事を再構成]

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