第一三共、がん免疫薬のイエスカルタを米社に承継 23年
第一三共は8日、がん免疫療法「CAR-T細胞療法」を使った血液がん治療薬「イエスカルタ」の日本の製造販売承認を、2023年中に米ギリアド・サイエンシズ日本法人に承継すると発表した。承継に伴う対価の有無は明らかにしていない。第一三共はイエスカルタの独占実施権を17年に、現在のギリアド傘下の米バイオ企業カイトから約60億円で獲得し、21年から製造販売していた。別の新薬開発に力を入れるため、約2年で手放すことを決めた。
第一三共は今後、抗がん剤「エンハーツ」など「抗体薬物複合体(ADC)」の新薬開発に経営資源を集中させる方針。
イエスカルタは、患者から採取した免疫細胞を遺伝子改変でがんへの攻撃力を高め、再び体内に戻す。第一三共は17年1月、カイトから契約金5000万ドル(当時約60億円)などで日本の独占実施権を獲得し、21年に製造販売の承認を得た。国内の薬価は患者1人あたり約3264万円で、ピーク時売上高は23年度に79億円になると予測されていた。第一三共は、これまでの日本での製品売上高を非開示としている。
CAR-T細胞療法は供給体制を構築するハードルが高い。患者の細胞を扱うため高い製造技術や品質管理が求められ、医療機関も認定が必要だ。第一三共は当初21年4月にイエスカルタの供給を始める予定だったが、製造委託先で原材料の規格試験が遅れ同年12月にずれ込んだ。認定医療機関も6施設にとどまる。今後も供給体制にさらなる投資が必要になることが見込まれ、ADCの新薬に投資を優先することにした。
ギリアドは17年8月にカイトを買収しており、欧米でもイエスカルタを販売している。ギリアド日本法人は今後、カイトの細胞治療事業本部を立ち上げ、イエスカルタの販売を自社で進める。23年初頭にはカイトの米工場から日本への供給も始める計画だ。
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