賃貸物件の原状回復DX、工事の受発注ネットで完結
先読みウェブワールド(野呂エイシロウ氏)
賃貸物件をめぐる不動産管理会社とのやり取りの中で少し面倒なのが退去時の原状回復だ。そんな原状回復の工事をネットで注文できるスタートアップ企業のリモデラ(大阪市)に着目した。2年前に立ち上がったばかりである。これまでと何が違うのだろうか。
福本拓磨社長によると、「従来の内装工事は、依頼者と職人の間に内装業者が入る形が一般的だった」という。内装工事業者は、見積もり作成したり、下請け業者(職人)を探したり、工期を管理することが仕事だ。リモデラは、「内装業事業者の業務をシステムに置き換えた全く新しいビジネスモデル」と話す。

まさに原状回復のデジタルトランスフォーメーション(DX)化である。一般的に原状回復とは、前賃借人が入居中に汚してしまった箇所や傷つけてしまった場所などを修復し、入居前の状況に戻すことをいう。
不動産管理会社の中には原状回復工事の見積もりや発注にFAXや電話を使う会社もあるそうだ。「これは非常に手間がかかるだけでなく、認識のずれや、言った言わないの問題も発生しやすい」(福本氏)
リモデラを利用することで、工事の発注に関わる生産性を大幅に改善させるだけでなく、写真データを保存して工事のトラブルを防いだり、不動産オーナーに対して詳細な工事内容を報告することができるようにしているのが特徴だ。
原状回復工事には一つの業者ではなく、複数の専門家が携わることが多い。その受発注をネット上で完結させようというのだ。これが工事関係者の心をつかんで急成長している。発注する側は法人(不動産管理会社)をターゲットとし、受注する側は主に建設業を営む個人をターゲットにしているが、数人規模の法人ユーザーもいる。
福本氏はもともとは別の会社で、建設業を経営していた。そこで従来型の内装工事業者として仕事を受注していたが、毎日職人に仕事内容やスケジュールのことで電話をしたり、見積もりや請求書を紙で印刷したりと、非常にアナログな業務に日々ストレスを感じていたという。
そこに建設業界の抱える課題を見つけ、新しいサービスができると感じてリモデラのビジネスモデルを思いついたそうだ。立ち上げたのは2020年だった。

新型コロナウイルスの影響で以前の事業の売り上げが急減し、経営できなくなっていたときだ。「やるしかないという環境だった」(福本氏)。そこから2年で事業を伸ばしてきた。事業転換をはかる実行力とスピード感が持ち味だ。
現在は関西と首都圏の一部で展開している。工事を依頼される度に自社スタッフが現地調査をする。サービス公開から約2年たち、多くの工事データが蓄積され、専門知識がない人でも現地調査を対応できるアプリの開発に成功した。現在は検証中としているが、「23年よりリモデラを日本全国で展開できるように準備を進めている」と語る。
世の中にはまだまだDX化が進んでいない分野が山のようにある気がする。DX化によって効率やコストダウンだけではなく、スピードも早くなるだろう。今後も様々な分野のDX化に注視したいと思う。
[日経MJ2022年6月12日掲載]
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