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ドローンの「心臓部」 異常時に別チップが肩代わり

日経クロステック

ドローン(小型無人機)開発のスタートアップ企業、プロドローン(名古屋市)は5日、ドローンに関するイベント「DRONE EXPO 2022 in Aichi」を開催した。「レベル4」といわれる「有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行」の解禁を12月に控え、同社が開発した多くの機体のデモ飛行や新技術などを紹介した。

当日は台風4号の影響で時折、強い雨が降る悪天候だったが、同社社長の戸谷俊介氏はデモ飛行の開始に当たり、「どんな天候でも安定して使えるところを見てほしい」と話した。

デモ飛行には、最大30キログラムのペイロード(可搬重量)を有する大型の物流ドローンのほかに、着水して水中撮影ができる防水型ドローン、ガソリンエンジンを搭載して2時間以上飛行できるシングルローター機などユニークな機体も登場した。

また、救命活動に同社製のドローンを使っている愛知県豊田市消防本部は、山岳救助のデモを披露した。ドローンが搭載するサーマルカメラで動けなくなった遭難者を発見し、ホイッスルを落として居場所を救助隊に知らせてもらうというシナリオだった。

実用化すれば世界初

今回のイベントで特に目を引いたのは、レベル4時代を見据えて同社が大型ドローン「PD6B-Type3」向けに開発している、新しい安全設計の仕組みだ。具体的には、加速度や地磁気など各種センサーの情報を解析して、姿勢推定や制御、プロペラのモーター回転数の制御などをつかさどる「フライトコントローラー」の冗長化である。

フライトコントローラーは、いわばドローンの「心臓部」で、冗長化が施されていない場合、何らかの原因で機能停止に陥ると直ちに墜落してしまう。それがこれまでのドローンで大きな問題になっていた。

もちろん、冗長化のために、フライトコントローラー用のチップを複数搭載するという手段はあるが、それでは機体のコストアップなどにつながる。同社は別の方法を考案した。

平常時は他の機能をつかさどっているチップが、異常発生時にフライトコントローラーの処理を肩代わりするのだ。具体的には、自動航行管理やテレメトリー(遠隔測定)データの処理などを請け負っているチップが緊急時の「代打」として活躍する。

イベントでは、フライトコントローラーへの電源供給を模擬的に遮断できるセットを使い、このフェイルセーフ機能の有効性を示した。同機能をオフにしている際は、フライトコントローラーへの電源供給が切れると同時にモーターが停止するが、オンの場合はモーターが回転し続けた。フライトコントローラーの異常を検知してから10ミリ秒という短時間で処理を切り替えることが可能だという。

現在、同機能を実験機で評価しており、2022年内にはPD6B-Type3のユーザーに提供したいとしている。ハードウエアの改良は不要で、ファームウエア(基盤ソフト)の更新で対応できる。こうした手法によるフライトコントローラーの冗長化は「世界でも類を見ない」(同社)。

なお、PD6B-Type3にはこれ以外に全球測位衛星システム(GNSS)やバッテリーへの給電などにも冗長設計が導入されているという。

(日経クロステック/日経エレクトロニクス 内田泰)

[日経クロステック 2022年7月7日掲載]

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