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日立、5年で利益倍増1兆円 データ事業成長にハードル多く

日立製作所は8日の機関投資家向け説明会で、2026年3月期までに営業利益を21年3月期比2倍の1兆円規模に拡大する長期目標を掲げた。ものづくり中心の事業構造から転換し、注力するデータビジネスで稼ぐ姿勢を明確にしたが株価の反応は限定的だった。海外売上高比率の拡大などハードルは多く、市場は実現性を見極めている。

「パンデミックなど逆境の中でも安定的に1兆円を稼ぐ」。次期社長の小島啓二副社長は冒頭、経営ビジョンを力強く語った。

これまでの日立の営業最高益は19年3月期の7549億円だ。これまでの最高益水準を大きく超える目標を示したが、市場の反応は鈍い。8日の終値は前日比0.1%(8円)高の6088円にとどまり、利益計画自体はほとんど材料視されなかった。

SMBC日興証券の吉積和孝氏は「市場の期待に沿った目標が出てきたのはポジティブだが、1兆円はあくまで目標値だ。今後の利益の積み上げを確認する段階で、現時点では強気になれる材料とはいえない」と語る。楽天証券経済研究所の窪田真之氏も「製造業からIT(情報技術)化にカジを切ったことは評価できるが、具体的な利益目標を織り込める段階にはなっていない」とする。

共通する指摘は、計画達成に向けた施策の勝算が見えないことだ。実際に、データビジネスの中核として位置づける、あらゆるモノがネットにつながるIoTサービス基盤「ルマーダ」事業では成長に向けた課題が山積している。

日立はルマーダ事業の売上高を26年3月期に前期比2.7倍の3兆円、営業利益は5000億円に引き上げるとした。この水準の達成には、海外での成長、事業領域の拡大、利益率の引き上げという3つのハードルが立ちはだかる。

ルマーダの主要サービスは国内向けが中心で、海外売上高比率は3割にとどまる。日立全体の海外売上高比率(5割)よりも低い。加えて金融や官公庁向けシステム構築などを手がけるIT事業に占めるルマーダの売上高比率が足元で22%なのに対し、エネルギーやライフ事業では4%と事業ごとにばらつきがある。工場機器の故障予兆検知など、事業横断的な活用は道半ばだ。

1兆円到達には、足元で10%超程度のルマーダ事業の利益率を17%まで高める必要がある。システム構築サービスを手がけるシステムインテグレーション(SI)において業務ミスなどで生じるコストの削減を徹底する仕組みをつくることなどで、収益性を高める取り組みが欠かせない。

成長のカギを握るのは、日立が約1兆円で買収を決めた米グローバルロジックだ。ハードにIoTや人工知能(AI)などの最新技術を組み合わせる「デジタルエンジニアリング」に強みがあり、海外顧客を多く持つ。相乗効果を早期に発揮することができれば、利益計画の実現性が高まる。

「正しいことを正しくやってきている」。海外機関投資家は日立の構造改革を高く評価する。ルマーダと関連の薄い事業売却を進め、グループ内に残る上場子会社は日立建機のみとなった。利益率が低迷していることに加え、グローバルロジック買収資金の返済を事業売却でまかなうとしており、注目が集まる。20年ぶり高値の株価をさらに高めるために、事業再編の完遂も焦点となる。

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