ANAHD、郵船から日本貨物航空を買収 コロナ後見据え

ANAホールディングス(HD)は7日、日本郵船の子会社で航空貨物輸送を手がける日本貨物航空(NCA)を買収すると発表した。10月にも郵船が保有するNCA株全てを取得し、将来的に事業の統合を目指す。航空貨物は新型コロナウイルス下で一時需給が逼迫したが、足元では市況も軟化している。コロナ後の物流需要を見据え、再編が必要と判断した。
買収額は未定としている。NCAの2022年3月期の純利益は前の期比2.4倍の608億円だった。新型コロナ下で業績を伸ばしたが、それまでは赤字体質で22年3月末は約600億円の債務超過だった。23年3月期の経常利益は630億円の見通しで、債務超過はほぼ解消する見通しだ。有利子負債も約1800億円あり、株式の買い取り額は数百億円規模とみられる。
NCAは米ボーイングの大型機「747」の貨物専用機を15機保有する。ANAHDは大型機「777」の専用機を2機、中型の「767」の専用機9機を持つ。ANAHDによると、2021年の輸送重量はANAが世界で13位、NCAは42位だった。両社を足すと9位になる。
日本発着の市場シェア(22年10月〜23年1月)は、ANAが約17%でNCAが約8%。買収後も当面はNCAが独立して事業運営を行うが、ANAグループの貨物事業会社、ANAカーゴとの統合も「視野に入れていく」(ANAHDの津田佳明・グループ経営戦略室経営企画部長)としている。
新型コロナウイルス下では旅客需要が落ち込む一方、海上物流の混乱や旅客便の減少などで航空貨物の単価が上昇。ANAHDも貨物輸送を強化してきた。旅客機の貨物スペースや中型の貨物専用機をアジア・中国路線で、大型の貨物専用機を北米路線で活用してアジアと北米間の輸送需要を取り込んでいる。
NCAは北米や欧州の主要都市に就航する。買収でアジアからANAが運んできた貨物を貨物専用機で欧米に運び、ネットワークを拡充できる。

足元では国際貨物の市況は悪化している。国際指標のTACインデックスによると、上海発北米向けが1キログラムあたり4.79ドル。新型コロナ前と比べると4割ほど高いが、ピークの21年12月と比べると7割下がっている。
モノの動きも鈍っている。国際航空運送協会(IATA)によると、世界の航空貨物の市場規模は23年に1494億ドル(約20兆円)と22年比で3割減少する見通し。貨物輸送量は5770万トンの見通しで、21年のピーク(6560万トン)を12%下回る。22年12月の世界の航空貨物の輸送量は前年同月比で15%減り、コロナ前の19年同月の実績も7%下回った。
IATAは「インフレなどで家計の支出余力が抑制されている」としている。ANAHDはコロナ禍で製造業がサプライチェーン(供給網)を多様化しており、需要を底上げするとみている。コロナ禍では自動車関連や半導体関連などの高単価な商材の輸送需要が増えた。