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官民のなれ合い露呈 NTT、澤田社長ら16人処分

総務省接待問題

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NTTは7日、総務省幹部への接待問題について調査報告書を発表した=共同

NTTによる総務省への接待問題では官民双方のコンプライアンス(法令順守)意識の甘さが露呈した。NTTは澤田純社長ら16人を処分しつつも、同社の特別調査委員会報告書は会食による政策のゆがみを「確認されなかった」としたが、企業と監督官庁の不透明な関係は通信行政の信頼性に関わる。国際競争力にも負の影響をもたらしかねず、再発防止の徹底が求められる。

特別調査委の報告書はNTTが不適切な会食を繰り返した原因を「倫理法や大臣規範に関する知識や感度が不足し、具体的な社内規程が存在しなかった」などと指摘した。

NTT法第19条はみなし公務員となるNTT職員の収賄について、懲役の厳しい罰則を明記する。一方で贈賄には特別な罰則がない。14年度に「贈賄防止ハンドブック」がグループ全体で共有されたが、形骸化していた。

総務省は放送・通信行政の課長級職員ら約170人を対象にした調査の結果、延べ78件の事業者との会食が国家公務員倫理規程に抵触すると認定した。会食相手で最も多かったのがNTTグループだった。

報告書によると、NTTとの会食29件のうち5件は総務省の政務三役が出席した。NTTの鵜浦博夫相談役らが総務省の谷脇康彦総合通信基盤局長(当時)と会食し、1人当たり6万480円の費用をすべてNTTが負担したケースもある。谷脇氏は東北新社からも接待を受けており、3月に辞職した。

NTTの尾崎英明執行役員は7日、「真摯に反省し、二度とこのような事態を引き起こさないように再発防止に努める」と謝罪した。処分対象は総務省側と案件・参加者とも「一致している」(尾崎氏)。

1985年に民営化されたNTTは政府が3分の1以上を出資し、総務相が取締役の選任などを認可する。大きな権限を持つ総務省の政務三役や幹部との会食は、利害関係者からの金銭やモノの受け取りを禁じる国家公務員倫理規程に反するリスクがあるなか、なぜ会食を繰り返していたのか。

ドコモ完全子会社化の検証が焦点に

最大の焦点は携帯料金の引き下げや、NTTによるドコモの完全子会社化など、通信行政に影響を与えたのかどうかにある。

NTTは20年9月にNTTドコモの完全子会社化を発表した。総務省(旧郵政省)は長年、NTTの市場支配力を弱めるためにグループの分離・分割を促してきた歴史がある。日本の通信産業の国際競争力の低下を背景にしてNTTはドコモの完全子会社化を進め、総務省は「認可事項ではない。日本として国際競争力を高めるべきだ」としたが、競合する通信企業からは「総務省が政策を転換した」との声が上がる。

20年12月3日にはドコモが、オンライン専用で低料金の新料金プラン「アハモ」を公表した。菅義偉政権は携帯大手に料金値下げを迫り、ドコモが率先して値下げに踏み切った格好だ。

20年6月から9月にかけ、総務省の政務三役や幹部と4件の会食があったが、報告書によるとNTT経営陣は「ドコモ完全子会社化は非常に重いインサイダー情報で、外部に漏れるとプロジェクトが立ち行かなくなる。会食の席でも一切言及していない」と否定している。携帯料金についても「話題に出すとドコモの経営の手足を縛ることになりかねない」と、会食での具体的なやり取りはなかったと強調した。

特別調査委は「会食は人事異動の挨拶や意見交換が目的で、総務省幹部による便宜供与やNTTグループからの便宜供与の依頼があったことは認められなかった」と結論づけた。

一方でKDDIやソフトバンクなど通信事業者21社は総務省に対し、ドコモの完全子会社化を巡り「行政対応がゆがめられていなかったか真相を究明すること」を要求している。

総務省は接待が政策に与えた影響を検証する弁護士らの委員会を設けており、NTTとの会食に関する結論はまだ出ていない。また、総務省の調査では会食した企業名はNTTグループと東北新社以外は匿名になっており、さらなる透明性も求められる。

NTTは再発防止策として、利害関係のある政務三役や官僚との個別の会食を原則、禁止にする方針だ。国家公務員倫理規程に詳しい近畿大の中谷常二教授は「会食を禁止する制度ができても、研修や教育などでコンプライアンスを認識する機会がなければ生かされない。外部のチェック機能を活用したり、経営陣の意識を改革したりする取り組みが必要だ」と指摘する。

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