欧米50銀行の7割がAIに言及 決算説明会を分析

銀行の決算説明会の内容からは、戦略投資や商品の拡大に至るまでAI戦略についての手がかりを得られる。
CBインサイツは最近、欧米の時価総額上位50行を分析し、AIを積極的に活用しているトップ3行を選んだ(記事「欧米銀行のAI活用トップ3行、1位は関連特許430件出願」)。その分析の一環として、決算説明会の議事録分析システムを使った。
上位50行がAIや関連技術について言及した決算説明会は2017年以降で計200件に達した。AIについて1回は論じた銀行は70%を占めた。
最も多くの決算説明会で論じたのはカナダのロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)と同TDバンク・グループで、それぞれ13回だった。

今回の記事では(上のグラフが対象としている17年からではなく)22年の決算説明会のデータに基づき、上位4行の主な発言や発表について取り上げる。(注:四半期決算に関する言及は、説明会の開催時点に基づく)
1.TDバンク、AIテックで医療に事業拡大
TDバンクは上位50行で唯一、スタートアップに自行のAIプラットフォームの使用許可を与え、医療分野に事業を拡大している。マスラニ氏は22年4~6月期の決算説明会で、シグナル1への出資の判断について説明した。TDは見返りに、シングル1のチームにAIプラットフォームの機能を改善してもらえる利点がある。
シグナル1はTDのAI部門「レイヤー6」を共同で設立したトミ・ポータネン氏が率いる。レイヤー6は18年にTDに買収され、現在は同行の応用AI部門になっている。
2.米JPモルガン・チェース、不正による損失額を数百万ドル削減
米JPモルガン・チェースは21年、稼働中の主なAIプロジェクトを150件から5年後に1000件に増やす方針を明らかにした。決算説明会の議事録からは、機械学習を活用するためのクラウド移行などのテクノロジーに年120億ドルを費やしていることが明らかになった。
ダイモン氏は22年7~9月期の決算説明会で、特定のAI投資(不正防止システム)によって多額の損失を削減したと強調した。
3.米バンク・オブ・アメリカのAIアシスタント、累計利用回数10億回に迫る
米バンク・オブ・アメリカがエリカの導入を初めて明らかにしたのは、17年の決算説明会だった。それ以降、17回の四半期決算の説明会でエリカについて言及している。
エリカの累計利用回数は10億回に迫っている。22年7~9月期の決算説明会では、エリカの利用者数が前年同期比30%増えたことを明らかにした。バンカメはエリカを資産運用ツール「ライフプラン」に搭載する計画だ。ライフプランは20年にサービスを開始し、利用者数は700万人を超えるとされる。

4.仏BNPパリバ、AIとESGを強化
仏BNPパリバは以前の決算説明会ではAIについてほとんどまたは全く触れていなかったが、22年1~3月期の決算説明会では不正防止テックからESGデータ分析に至るまで15回も言及した。
テハウィ氏はこの決算説明会で、BNPパリバは「(AIの)有用な活用事例を25年までに1000件に増やす」方針を示した。具体的には、ESGや持続可能な分野へのAI融資を柱に据え、この分野のスタートアップへの投資や提携を増やしている。22年4~6月期の決算説明会では「ESG」に14回言及している。
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