欧米50銀行の7割がAIに言及 決算説明会を分析 - 日本経済新聞
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欧米50銀行の7割がAIに言及 決算説明会を分析

欧米の銀行が人工知能(AI)技術の活用に意欲的だ。時価総額上位50行の2017年以降の決算説明会の議事録を分析すると、7割がAIについて言及していた。カナダのTDバンク・グループは自社のAIをスタートアップに使ってもらうことで医療分野にも展開。米JPモルガン・チェースは決済の不正防止システムを開発し「損失額が減り、取引量が増えている」と強調した。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

銀行の決算説明会の内容からは、戦略投資や商品の拡大に至るまでAI戦略についての手がかりを得られる。

CBインサイツは最近、欧米の時価総額上位50行を分析し、AIを積極的に活用しているトップ3行を選んだ(記事「欧米銀行のAI活用トップ3行、1位は関連特許430件出願」)。その分析の一環として、決算説明会の議事録分析システムを使った。

上位50行がAIや関連技術について言及した決算説明会は2017年以降で計200件に達した。AIについて1回は論じた銀行は70%を占めた。

最も多くの決算説明会で論じたのはカナダのロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)と同TDバンク・グループで、それぞれ13回だった。

今回の記事では(上のグラフが対象としている17年からではなく)22年の決算説明会のデータに基づき、上位4行の主な発言や発表について取り上げる。(注:四半期決算に関する言及は、説明会の開催時点に基づく)

1.TDバンク、AIテックで医療に事業拡大

「当行のAIの機能は世界トップクラスで、その用途は銀行業にとどまらない。先月には(カナダの病院システムのスタートアップである)シグナル1(Signal 1)への出資を発表した。シグナル1はAIを活用して医療提供体制を改善する。これは新型コロナウイルス禍で一段と高まっている明確なニーズだ」――バーラット・マスラニ最高経営責任者(CEO)

TDバンクは上位50行で唯一、スタートアップに自行のAIプラットフォームの使用許可を与え、医療分野に事業を拡大している。マスラニ氏は22年4~6月期の決算説明会で、シグナル1への出資の判断について説明した。TDは見返りに、シングル1のチームにAIプラットフォームの機能を改善してもらえる利点がある。

シグナル1はTDのAI部門「レイヤー6」を共同で設立したトミ・ポータネン氏が率いる。レイヤー6は18年にTDに買収され、現在は同行の応用AI部門になっている。

2.米JPモルガン・チェース、不正による損失額を数百万ドル削減

「当行は一定のリスクや不正に対処する(AI)システムの開発に1億ドル(約140億円)を費やした。これにより消費者の決済を処理する際の損失額は1億ドル減り、2億ドルになった。取引量は増えており、これは大きな利益だ」――ジェイミー・ダイモンCEO

JPモルガン・チェースは21年、稼働中の主なAIプロジェクトを150件から5年後に1000件に増やす方針を明らかにした。決算説明会の議事録からは、機械学習を活用するためのクラウド移行などのテクノロジーに年120億ドルを費やしていることが明らかになった。

ダイモン氏は22年7~9月期の決算説明会で、特定のAI投資(不正防止システム)によって多額の損失を削減したと強調した。

3.米バンク・オブ・アメリカのAIアシスタント、累計利用回数10億回に迫る

「当行のデジタルバンキングのアクティブユーザーは4300万人で、今四半期の利用回数は過去最高の28億回に達した。AIアシスタント『エリカ』の利用者数は前年同期比30%増え、顧客とのやり取りの回数は4~6月期だけで計1億2300万回に上った」――アラステア・ボースウィック最高財務責任者(CFO)

バンク・オブ・アメリカがエリカの導入を初めて明らかにしたのは、17年の決算説明会だった。それ以降、17回の四半期決算の説明会でエリカについて言及している。

エリカの累計利用回数は10億回に迫っている。22年7~9月期の決算説明会では、エリカの利用者数が前年同期比30%増えたことを明らかにした。バンカメはエリカを資産運用ツール「ライフプラン」に搭載する計画だ。ライフプランは20年にサービスを開始し、利用者数は700万人を超えるとされる。

4.仏BNPパリバ、AIとESGを強化

「当行はESG(環境・社会・企業統治)データと分析に特化したクラウドベースのデータ基盤を開発した。最高のESGデータをとりそろえ、AIとアナリティクス(解析)を全ての事業分野に提供することで、顧客や提携パートナーによるさらに持続可能な経済の構築を支援できる」――リム・テハウィ最高データ責任者(CDO)兼グローバルリスク部門幹部

仏BNPパリバは以前の決算説明会ではAIについてほとんどまたは全く触れていなかったが、22年1~3月期の決算説明会では不正防止テックからESGデータ分析に至るまで15回も言及した。

テハウィ氏はこの決算説明会で、BNPパリバは「(AIの)有用な活用事例を25年までに1000件に増やす」方針を示した。具体的には、ESGや持続可能な分野へのAI融資を柱に据え、この分野のスタートアップへの投資や提携を増やしている。22年4~6月期の決算説明会では「ESG」に14回言及している。

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