次世代パワー半導体材料、100分の1のコストで製造

東北大学発スタートアップのC&A(仙台市)と東北大の吉川彰教授の研究グループは、省エネにつながる次世代パワー半導体の材料「酸化ガリウム」を、従来の100分の1のコストで製造する手法を開発した。高価な装置が不要で歩留まりも向上する。2年後をメドに、実用化に必要な大きさの結晶をつくる考えだ。
研究グループは原料を直接加熱して酸化ガリウムの結晶をつくる装置を開発し、最大約5センチメートルの結晶を作製した。水で冷やした銅の容器に原料を入れ、従来手法の100倍程度高い周波数の電磁波を流して原料を溶かす。

従来手法では貴金属の一種であるイリジウムでできたつぼを温めて中の材料を溶かし結晶をつくる。直径15センチメートル程度の実用的な結晶をつくる場合、容器だけで3000万~5000万円かかるほか、結晶の品質が安定しないといった課題があった。
高価な容器が必要なくなることなどから、新手法では酸化ガリウムの結晶を現状の100分の1程度のコストで製造できるという。2年後をメドに、直径15センチメートル以上の結晶の作製を目指す。
現在のパワー半導体は主にシリコンを基板に使うが、電力ロスが起きるのが課題だった。酸化ガリウムは炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウムなどとともに次世代素材として期待が集まる。電力ロスは理論上シリコンと比べ約3400分の1、SiCと比べて約10分の1になるという。
電気自動車(EV)のモーター駆動用電源に酸化ガリウム製のパワー半導体を利用した場合、電池の容量が同じでもより長く走行できる。C&Aと東北大のグループはボトルネックになっていた製造コストを新手法で下げ、実用化にはずみをつける。
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