マイクロソフト、ChatGPT本格活用
先読みウェブワールド(藤村厚夫氏)
文章で質問をすれば、人工知能(AI)が流ちょうな日本語で簡潔に、あるいは詳しく解説してくれるチャットボットの「Chat(チャット)GPT」が話題だ。AIが画像や動画を生成するサービスは本コラムでも紹介してきたが、人間が書いたものと見分けがつかないような自然な文章を生成するサービスでは、オープンAIが開発したチャットGPTが驚くほどのレベルを見せている。

専門的なこと、あるいは誰もが知っているようなことについて質問すれば、おおむね平易な文章で解説し、破綻がない。とはいえ、チャットGPTが返す解答や解説が必ずしも「正確」とは限らない。たとえば、専門知識が必要な投資分野の質問についてもっともらしい解説はなされるものの、専門家から誤りが指摘されたりするのが現状だ。
だが、その解説ぶりはあまりに流ちょうであり、誤りを指摘すると学習する機能も備えている。2022年11月のサービス開始からわずか5日間で100万ユーザーに到達するなど、劇的な成長を見せ、影響は各方面に広がっている。
AI技術の進化や影響力になれたIT(情報技術)業界も揺らいでいる。たとえば、グーグルが圧倒的なシェアを誇ってきた「検索」の姿を変えてしまうだろうとささやかれている。
知りたいことをたずねれば平易な文章で回答してくれるのだから、ユーザーは、従来のように数多くの検索結果にいちいち当たる必要を感じなくなってしまうかもしれない。そうなれば、検索結果との連動を根幹としてきたグーグルの広告事業は揺らぎかねない。
この影響力に目をつけたのがマイクロソフトだ。同社は検索でもAI関連製品でもグーグルなどに後じんを拝してきた。そこで、オープンAIに100億ドルともいわれる巨額を投じる見返りに事業提携を進め、AI分野で一気に先頭に躍り出ようともくろむ。
最高経営責任者(CEO)のサティア・ナデラ氏は、チャットGPTやその他AIツールを、同社の全製品に搭載していく意欲的な計画を公言している。

検索サービスはもちろん、「Windows」などのOS(基本ソフト)、クラウドの「アジュール」などに搭載するほか、最大の目玉は、同社の売れ筋商品「オフィス365」への応用だ。文書作成、メールやカレンダー、表計算、プレゼンテーションなどのアプリにも搭載されることになるわけだ。
近い将来、リポートやメールの作成作法は、人間が文字数や盛り込むべきトピックスといった要件の指示を与えることに限定されていくかもしれない。表計算では、世にある統計データなどを使い、気の利いたグラフ入りの資料を作ってくれるかもしれない。面倒だったスケジュール調整などもお任せできそうだ。
このようなアイデアは、チャットGPTにオフィス製品がどうなりそうかを尋ねてみた結果だ。期待が持てる予言といえそうだ。そうなれば、ビジネスパーソンの仕事は、AIに指示すること、できあがった資料に手を入れることが中心になりそうだ。人間の手の入れ方、その度合いが人間ならではの貴重な個性となっていくのかもしれない。
[日経MJ2023年2月12日付]