NTT、神明HDと農作物流通DXで共同実験 24年度商用化

NTTは5日、コメ卸最大手の神明ホールディングス(HD、神戸市)などと農作物の流通分野でデジタル技術を導入し、効率的な仕組みの実現に向けた共同実験を始めると発表した。サイバー空間上に仮想市場を構築する。未来予測で流通コストの削減に取り組み、2024年度の商用化を目指す。
神明HDの子会社で青果卸大手の東果大阪(大阪市)が実験に参画する。電子空間に仮想モデルを作る「デジタルツイン」を活用する。取引データや気象情報などの生産予測や消費動向の変化などのデータを組み合わせて未来予測し、効率的な取引を実現する。この仕組みの導入で、現在よりも1週間程度前に売買が成立できるようになるとしている。
国産の青果物の9割が市場流通で売買されるなか、需要に関係なく市場に農作物が集まる。価格の低下や売れ残った農作物の周辺市場への再配送で、輸送コストがかかるなどの問題に直面している。
生産者や卸、小売りなど各事業者が参加し、農作物のデジタルトランスフォーメーション(DX)化に取り組む。生産者は需要に応じた農産物の生産を実施し、収益の安定化につなげる。輸送トラックの積載率向上などで、全体の輸送量を約3割削減させる。
NTTは消費電力を大幅に減らす独自の光技術を使った通信網「IOWN(アイオン)」関連技術の投入も進める。同社の川添雄彦常務執行役員は「未来予測にはデータのAI(人工知能)処理で大量の電気を消費するが、この問題も解決したい」と述べた。
共同実験は21年度から始まる。予測技術の開発を進め、24年度に商用化を目指す。25年度以降に海外展開も視野に入れるとする。