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追い詰められる新生銀行 対SBI買収防衛策に国が難色?

日経ビジネス電子版

買収防衛策を本当に発動できるのか――。

インターネット金融大手のSBIホールディングス(HD)から、TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられた新生銀行について、金融関係者の間でこうした疑念が広がっている。新生銀は、TOBへの賛否を「留保」しており、そうした中で買収防衛策の導入を決めたが、その実現性・妥当性を疑問視する声も上がる。

きっかけは9月9日だった。SBIHDは新生銀に事前調整のないまま、約20%保有する新生銀株を最大48%に引き上げて新生銀の子会社化を目指す、と表明した。TOB価格は1株2000円で、約1100億円を投じるとした。

不意打ちを食らった新生銀は、株主にTOBに応じるかを判断する材料が不足しているとし「株主の意思を確認するための十分な時間が必要だ」などとけん制。9月17日、事実上SBIHD以外の既存株主に新株を渡し、SBIHDの保有比率を下げることを狙う買収防衛策、いわゆる「ポイズンピル(毒薬条項)」の導入を決めた。

その後、両社は、相手の意向を確認する公開質問状を送り合うなど泥仕合の様相を呈している。9月29日、SBIHDは、新生銀の求めに応じる形でTOB終了期限を10月25日から12月8日に延長、両社の対立が長期化している。

国はSBIHDに賛成?

今後の焦点は、新生銀株の約2割を保有する預金保険機構と整理回収機構の動向だ。両機構は金融庁が母体。新生銀は11月以降、買収防衛策発動の賛否を問う臨時株主総会を開く予定だ。買収防衛策の賛否を通じ、国が今回の買収劇への態度を示す可能性がある。

国にとって新生銀は、大手行として唯一、過去の旧日本長期信用銀行時代に注入した公的資金約3500億円を回収できていない。政府が注入額の回収に必要な新生銀の株価は7450円と、現在の1800円台からはかけ離れている。こうした現状も判断材料になりそうだ。

一連のSBIHDの動きについて、金融庁関係者は「公的資金を返済できていない現新生銀経営陣が体たらくだ。SBIHDのTOBに基本的に賛成の立場だ。買収防衛策については事実上大株主である国のお墨付きが必要だ。1株当たりの配当額が減り、株価下落要因にもなり得る株式のダイリューション(希薄化)を行う新生銀の買収防衛策にそもそも我々はOKを出せないのではないか」と話す。

もっとも、金融庁は表立って賛否を表明していない。だが、本心は見え隠れする。一連の問題でSBIHDは8月13日、金融庁に20%超の主要株主となることへの認可を申請。金融庁は9月9日、それを認めた。1カ月間にどのような議論があったのか。

「まず、一般的なTOBの場合と比べて申請を却下する理由があるかを検討したが、それはなかった。新生銀が買収防衛策を導入する際、どのような形になるかなど、あらゆるシミュレーションをして判断した。こちらの方が知識も経験も断然ある。新生銀は、我々が買収防衛策の実現性・妥当性に懐疑的であることを読み切れていないのではないか」と前述の金融庁関係者は指摘する。

別の金融庁関係者も「通常は1~2週間程度で認可を出すが、今回はネット金融大手のSBIによる銀行買収ということもあり、世間の注目度も高いことから、リスクを相当考えた」と話す。その結果の認可だ。

新生支援、平時ならいいが……

SBIHDは「経営陣の保身だ」などとし、買収防衛策の差し止め請求の仮処分申請も検討中だ。また、新生銀が買収防衛策で割り当てる株式数について、「新生銀の発行可能株式数(4億株)と発行済み株式数(約2億6000万株)から試算すると、株主総会における特別決議を経ることなく新株1個につき目的となる株式1株の割り当ては不可能。新株1個あたりの目的となる株式の数を明確かつ早急に示してほしい」と求めている。

対する新生銀。水面下で企業価値向上につながる支援者、ホワイトナイト(白馬の騎士)を探しているとみられるが、難航しているようだ。打診先の一つとされるある企業の関係者は「平時なら資本提携などの協業も考えられるが、シナジーを出すことを考えるのにも相当時間がかかる。何よりも株価が実力以上につり上がった有事では難しい」と話す。

新生銀は今後SBIHDのTOBに反対を表明する際、公的資金返済への道筋を付けるさらなる企業価値向上策を示し、株主と国民を納得させなければならない。どのような姿勢で臨むのか、関係者の注目が集まっている。

(日経ビジネス 小原 擁)

[日経ビジネス電子版2021年10月5日の記事を再構成]

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