コンビニアプリの利用、2年で2.8倍
読み解き 今コレ!アプリ フラーシニアデータストラテジスト 木下大輔氏
新型コロナウイルスの影響でオフィス街の店舗を中心に2020年度に苦戦したコンビニエンスストア業界。21年度は回復傾向にあるなか、顧客との接点創出や決済の観点で欠かせない存在となったアプリはこの2年で大きく変容している。キーワードはユーザー規模拡大とアプリをハブとした店舗体験の進化だ。
コンビニのアプリシフトは鮮明だ。フラー(新潟市)が手がけるアプリ分析ツール「AppApe(アップ・エイプ)」によると、21年10月のコンビニ大手3社が手がけるコンビニアプリの月間利用者数(MAU)の合計は2840万人。コロナウイルスの影響が顕在化する前の19年10月に比べ実に2.8倍に増加した(iOS・アンドロイド合算)。

21年10月のMAU順位を見ると、第1位はセブンイレブンの「セブンイレブンアプリ」、第2位はローソンの「ローソン」、第3位ファミリーマートの「ファミペイ」となった。
コンビニ各社のアプリ利用者数増加の一因は、コロナによる他業態の時短営業や巣ごもり需要を捉えた商品展開などに加え、「クーポン」「ポイント」「モバイル決済」というユーザーのインセンティブと利便性向上につながる機能の連携がより密なものとなり、アプリを使った店舗体験が向上したことにあると筆者は考える。
セブンイレブンは21年2月、アプリ上でモバイル決済のPayPayを利用できるアップデートを実施。セブン&アイグループ店舗を利用するとたまる「セブンマイル」とアプリ内で連携し、クーポン利用、モバイル決済、マイレージポイント獲得を店舗でスムーズに行うことができるようになった。セブンイレブンアプリとPayPayのアプリをそれぞれ起動する必要がないため、コンビニを使う際の時短や負荷軽減に大きく寄与する形だ。
ローソンは20年5月にアプリリニューアルを実施し、ポイントカードやクーポンのバーコードをまとめて表示できる「MY BOX」機能を追加した。こちらも店舗で利用できるクーポン利用からモバイル決済の「auペイ」の利用、ポイント獲得までを一つのアプリ内で済ませることができる。ファミリーマートもクーポン・ポイント・モバイル決済の「ファミペイ」の利用を1つのバーコードで完結できる。
いずれもこれまではクーポン、ポイント、決済という単独アプリを立ち上げる必要があったが、機能が一つに統合したことで、コンビニに行ったらコンビニアプリを使うことがこの2年で定着している表れだと筆者は感じている。
一方で、3社とも高い次元でシームレスなアプリ体験を実現できており、今後の大きな差別化要因にはなりにくい。コンビニアプリは店舗での体験の良しあしを左右する重要な要素だけに、蓄積するアプリ内でのユーザー行動や決済などのデータを生かした次の一手を模索し続けることが重要になってくる。
購買データを駆使して時代のニーズに柔軟に対応しながら新しいニーズを取り込むことで成長してきたコンビニを取り巻く勢力図は、新たなデータソースであるアプリを軸に引き続き混沌としていきそうだ。