海運3社、異例の連続上方修正 コンテナ船好調で最高益

好調なコンテナ船事業を追い風に、海運大手3社の業績が急拡大している。2022年3月期の業績予想では、各社とも最終利益が最高を更新する見込みだ。新型コロナウイルス下の旺盛な巣ごもり消費や、北米を中心としたサプライチェーン(供給網)の混乱が想定以上に長引いており、昨年度から大幅な上方修正を繰り返す異例の事態となっている。

日本郵船が4日発表した今期の連結業績予想では、純利益が前期比3.6倍の5000億円となる見通し。7月初め予想から1500億円上積みした。4日に修正を発表した川崎汽船も前回予想より750億円多い2650億円(前期比2.4倍)、7月30日に発表した商船三井も6月21日の予想から1250億円上積みした3350億円(同3.7倍)にするなど、いずれも短期間で大幅な修正になった。
日本郵船の丸山徹執行役員は「上方修正をここまで繰り返すのは経験がない。修正の金額幅も非常に大きく、過去に例のない水準」と語る。要因は3社のコンテナ船部門を統合して発足した共同出資会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」の採算の急改善だ。
従来、コンテナ船の運賃は6月末には軟化するとの予想が多かったが、足元でもなお上昇が続いている。上海航運交易所によると、7月末の上海発米東海岸向け運賃が40フィートコンテナ1個1万67ドル(約110万円)となり、データがある09年以来初めて1万ドルの大台を突破した。
新型コロナの感染拡大に伴う巣ごもり消費の拡大で、米国を中心に荷動きが急増。米調査会社のデカルト・データマインによると、21年1~6月のアジア発米国向けコンテナ輸送量は前年同期比4割増え、過去最高となった。

一方、コロナによる港湾の労働効率低下や内陸輸送の目詰まりもあって、通常のスケジュールで船を運航できていない。海運調査会社シーインテリジェンスによると、6月時点で予定通りに港に到着できたコンテナ船は約4割にとどまる。米国の主要港では今もなお「渋滞」が発生し、輸送力の供給が滞っている。コスト増にもつながるが、運賃の上昇はそれを上回っている。
今後の業績の焦点となるのは運賃下落のタイミングだ。現時点では「中国の国慶節の大型連休で生産活動が停止する10月から軟化する」(商船三井の日野岳穣常務)との見方が強い。ただ日本郵船の丸山執行役員は4日、業績予想の前提は保守的にみており「結果的に数カ月後、上方修正する可能性はある」と話した。
同日、日本郵船は今期の年間配当を従来計画に500円上乗せし、過去最高の700円(前期は200円)にすると発表した。川崎汽船は未定を維持し「早期の復配に努力する」(山鹿徳昌常務)とした。
この日の決算発表を受け、日本郵船の株価は一時前日比870円(13%)高の7440円まで上昇した。終値は同360円(5.5%)高の6930円だった。商船三井と川崎汽船も一時年初来高値を更新したが、終値は前日を下回った。