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なぜZ世代は「容易に本心を見せない」と思われるのか

日経ビジネス電子版

ビジネス環境の変化や人手不足に対応するため、多くの企業が若手社員に対し、1990年代半ば以降に生まれたZ世代ならではの感覚や強みを生かしてほしいと期待を寄せている。一方、職場内でZ世代と上司世代とのコミュニケーションが十分に取れていないとの声は多い。なぜZ世代は「容易に本心を見せない」と思われるのか。新人・若手社員の育成に詳しいリクルートマネジメントソリューションズ主任研究員の桑原正義氏に聞いた。

◇    ◇     ◇

上司世代がZ世代に対して抱える悩みの大半は、コミュニケーションについてだ。「そもそも何を考えているのか全く分からない」という声が多い。背景には、Z世代の育った社会情勢や教育システムがある。

上司世代と比較すると、Z世代は自分の仕事での悩みや課題点を抱え込みがち。自分の価値観を積極的に他人に開示することをためらう傾向がある。上司世代から「Z世代が何を考えているのか分からない」という相談が多いのはこのためだ。それまで予兆を見せていなかったのに、突然退職してしまうようなケースがある。

Z世代がチャレンジして失敗することを恐れたり、簡単に本音を見せなかったりするという傾向を見せる背景には、彼らが生まれ育った環境がある。「デジタルネーティブ」である彼らは、これまでの人生を通じて、インターネットで分からないことを検索し、答えを見つけてきた。

安易に質問するのが苦手

そのため、「分からないことを他人に尋ねる」ことは自分の調査不足、勉強不足だと捉えがちで、安易に質問することに苦手意識を抱く。さらに核家族世帯で育った割合が高く、「人間関係が浅い他人に弱みを見せる」という経験が少ない。そのため、Z世代は関係が浅い上司や先輩に自分の悩みを開示できず、これが突然の退職につながることがある。普段から交流の少ない上司や先輩に「最近悩みはある?」と聞かれても、「『大丈夫です』としか答えない」といわれるのには、このような背景がある。

このような場合、上司世代にできることは相互理解のためにコミュニケーションを取ることだ。だが、コンプライアンスがより重視されている近年、うかつにプライバシーを探るような会話は難しい。「尊敬する人」「愛読書」「購読している新聞」を聞くことすら、コンプライアンス違反とみなされるケースがある。コミュニケーションにも一工夫加えることが欠かせない。職場におけるZ世代の安心感を高めるため、先輩たちが積極的に自分を開示していけば、Z世代が自らの価値観や悩みを共有しやすい環境づくりにつながる。信頼関係が構築されていれば、Z世代も職場の悩みや課題を進んで共有するようになるだろう。

Z世代は内的動機を重視

また、Z世代は内的動機を重視するため、自分の価値観や意義とずれた、いわゆる「やりたくない仕事」に取り組むことに抵抗を示しやすい。これは、個性や多様性を尊重する教育を受け、便利な社会でやりたくないことをやる経験が浅いということが要因と考えられる。だが、自分の価値観や目標に合致した仕事であれば、地道に取り組んで成果を上げる能力がある。本人がどのようなことでモチベーションを高められるのかを理解し、状況を本人にとってポジティブな側面から伝える、「捉え直し」をしてあげることも重要だ。

ビジネスに必要な能力も備えている。デジタルネーティブならではの「最新技術を活用した経験」に加え、他者の倫理観を尊重しながら話す「共創力」が高い。また「自分にとっての価値や意味を追求する」姿勢は、個人よりも組織を優先しがちな上司や先輩が参考にできる点でもあるだろう。

ここまでZ世代の特徴を話してきたが、そもそも世代としての共通の特性は、育ってきた社会的な環境や経済情勢、彼らに影響を与えた人物によるものが大きい。例えば両親の価値観に強く影響を受けている場合、Z世代でも現在の40~50代と近い感覚を持っていることがある。そのため、一概に「Z世代はこうだ」と決めつけることはできないが、世代ごとの違いが時代や社会情勢によるものだという意識を頭の片隅に置いておけば、相互理解が進みやすくなるのではないだろうか。

(日経ビジネス 馬塲貴子)

[日経ビジネス電子版 2022年11月2日の記事を再構成]

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