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海運3社の純利益、コンテナ船の追い風やまず 22年3月期

コンテナ船事業の追い風が続く海運大手3社の業績拡大が止まらない。各社は2022年3月期予想を大幅に引き上げ、連結純利益は過去最高を更新する。今期見通しの上方修正はすでに3回目。3社合計のコンテナ船事業の経常利益は1.3兆円近くにのぼり、前期の3.6倍にまで膨れ上がる。突如訪れた「海運バブル」で稼いだ利益を脱炭素に向けた投資に振り向けられるかが、各社の中長期の競争力を左右する。

日本郵船が4日発表した今期の連結業績予想は純利益が前期比5.1倍の7100億円となる見通し。8月時点の従来予想を2100億円上回る。川崎汽船も同日、今期の純利益見通しを従来予想から1050億円引き上げ前期比3.4倍の3700億円となりそうだと発表した。2社は2期連続で過去最高益となる。10月29日に発表済みの商船三井も7月時点の従来予想を1450億円上回る4800億円(前期比5.3倍)としていた。

海運大手3社の大半の利益を稼ぎ出すのは、17年にコンテナ船事業を統合して立ち上げた共同出資会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」だ。日本郵船が38%、商船三井と川崎汽船がそれぞれ31%ずつ出資しており、ONEからの持ち分法投資損益は営業外で計上する。経常利益に占めるコンテナ船事業(ターミナルなど含む)の割合は日本郵船が72%、商船三井が85%、川崎汽船が95%となる。

新型コロナウイルス禍前までコンテナ船運賃は長期低迷が続き、16年には韓国コンテナ船大手の韓進海運が経営破綻に追い込まれた。ONEも設立直後に赤字となるなど厳しい経営が続いてきた。

それが新型コロナで一転した。巣ごもり消費の拡大から輸送需要が急増。一方で感染対策による作業員の労働効率の悪化が港湾や米国での内陸輸送などの目詰まりにつながった。3月末に起きたスエズ運河の座礁事故も響き、コンテナ船は港で混雑状況になるなど供給側の制約が続く。

需給のギャップが埋まらず、コンテナ船運賃も高止まりする。日本海事センターによると、アジア発米国向けの20フィートコンテナ1個あたりの運賃は9月時点で3月から3倍超まで上昇した。新型コロナ前の19年9月と比べると約6倍の水準だ。5月時点では3社合計の今期のコンテナ船事業の経常利益は1420億円の見込みだったが、運賃の市況の高騰で約9倍となり、業績を大きく押し上げる。

先行きの見通しも強気だ。日本郵船の丸山徹執行役員は、4日のオンライン記者会見で「(来年2月の)中国の春節まではコンテナ船の混雑状況は緩和されないと見ている」と述べた。同社はこれまでは国慶節(10月)後には混雑が緩和されると見ていた。

日本郵船は4日、今期の期末配当を従来予想比100円増の600円とし、年間配当を800円(前期は200円)にすると発表した。川崎汽船はこれまで未定としていた年間配当を300円とすると発表した。好業績を受けて16年3月期以来6期ぶりの復配に踏み切る。

もっとも、株式市場の見方は厳しい。日本郵船も川崎汽船も4日の決算発表後に株価が下落に転じ、一時は前営業日比10%安となった。商船三井も一時5%安となった。同日昼に発表したONEから3社への配当金についてJPモルガン証券の姫野良太シニアアナリストは「市場の期待に届かなかったことが響いたのではないか」と見る。

ONEの配当金が少ないと、各社の成長に振り向ける資金も少なくなる。荷主からの要請もあり、脱炭素に向けた投資を急いでいるからだ。3社は50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにすることを目指している。達成に向けては各社の本業の自動車運搬船や大型ばら積み船などで燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアや水素燃料船への切り替えが不可欠だ。

本業のもうけを示す今期の3社合計の連結営業利益見通しは期初時点の見通しに比べて3倍の2800億円と、経常利益見通しの5.5倍に比べて伸びが小さい。コロナの影響が薄れコンテナ船の運賃市況が正常化すれば、本業の実力が問われることになる。中長期で収益構造を安定するための投資を実行できるかが今後の課題となる。

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