九段会館の建て替え完了 東急不動産、健康経営を支援

東急不動産は8日、旧九段会館(東京・千代田)を建て替えた新ビル「九段会館テラス」の内覧会を開いた。10月1日に開業する。旧九段会館の外装や内装の一部は保存しながら、テナント同士の交流を促す「職域食堂」などを整えた。企業の健康経営を後押しするビルと位置づけている。
九段会館テラスは地上17階、地下3階建てで各フロアをオフィスや飲食店などで構成する。城郭風の建築様式の一部を保存・復元し、高層ビルを建設した。建物の北東側はエイジング塗装や代替材を活用して閉館時の雰囲気を残しながら、最大200人を収容できるホール2カ所を設けた。セミナーや講演会などでの利用を想定する。
東急不動産の岡田正志社長は新ビルについて「新築と旧設備の調和が取れたレトロモダンな雰囲気」を重視したと説明する。保存部分の2階から4階は大小8つの貸会議室や小規模オフィスに改装した。一部のラウンジスペースは商談などの場として、一般来訪者にも開放する。
調光ガラスでエネルギー消費を削減
オフィスビルの外装は環境配慮型の調光ガラスを採用した。窓部分に電圧をかけ、日差しや気温に合わせて色調を4段階に調整する。照明や空調設備のエネルギー消費を最大で約20%削減できると東急不動産は説明している。
テナント企業の社員などが使う職域食堂やエレベーターホールの混み具合はデジタル掲示板にリアルタイムで表示する。全館の手洗い場に吸引式のハンドドライヤーを設置するなど、働く人の健康に配慮した設備もそろえた。
敷地北側の正面玄関前には地域に住む人たちが交流できる緑地スペースを確保し、皇居に隣接する北の丸公園東側の牛ケ淵沿いには遊歩道を設けた。8日に開いた内覧会で東急不動産の根津登志之・執行役員開発企画本部長は「地域住民向けのイベントなども計画している。この物件を、まちのシンボルにしていきたい」と語った。
旧九段会館は戦前に「軍人会館」として建設され、戦後はホテルや結婚式場、貸しホールとして使われてきた。2011年には東日本大震災による天井の崩落事故が発生し、廃業につながった。

東急不動産と鹿島は土地と建物を落札し、建て替え計画を進めてきた。工事にあたって保存部分の地下1階で全ての柱に免震装置を設け、老朽化したコンクリートを補修した。創建当時の雰囲気を残しながら、建物の耐震性を向上させることに力を入れた。
根津氏は九段会館テラスについて「企業の健康経営を通じて、オフィスの存在意義を示せる場にしたい」と話す。入居企業の社員がリフレッシュできる屋上庭園など、精神的な健康面にも配慮している。東急不動産はウエルネス(健康や幸福)事業としてシニア向け住宅やリゾート施設の運営を手掛けており、オフィス空間でも従来とは異なる形を打ち出していく考えだ。
(山口和輝)

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