花王とライオン 消費者が支持した商品パッケージは?

新型コロナウイルス禍で生活者の衛生意識が高まり、手洗いに関する意識が向上、手洗い回数も増えている。拡大中のハンドソープ市場で、存在感を示す花王「ビオレ」とライオン「キレイキレイ」の2つのブランドの新製品を取り上げ、それぞれのパッケージデザインを消費者に評価してもらった。
ライオンによると、2020年のハンドソープの市場規模(金額)は前年比の約2倍。21年(見通し)は規模がやや縮小したが、20年比の約7割、19年比では1.3倍程度を保持していた。
そんななか、洗浄・除菌などの従来の機能に加えて、「手肌にうるおいを与える」「手洗いを楽しくする」といった付加価値のあるハンドソープも続々登場している。今回は、「ビオレ ザ ハンド 泡ハンドソープ シフォンローズの香り」(A)と、「キレイキレイ薬用ハンドコンディショニングソープ」(B)を比較。AとB「どちらの商品を買いたいか」(Q1)と聞くと、全体ではAが44.3%、Bが55.7%だった。
Aは、花王の「ビオレ」ブランドから21年10月30日に発売。コロナ禍でのこまめな手洗いを想定し、「まさつレス」の超微細な泡を特徴にした。22年1月現在、シフォンローズの香り、ボタニカルハーブの香り、シャインシトラスの香りの3種類があり、シフォンローズはピンク、ボタニカルハーブは緑、シャインシトラスはオレンジが基調だ。香りやパッケージデザインにもこだわり、手洗いの時間を楽しめるよう工夫したという。白を基調とした通常のビオレとは大きく異なるイメージで、ラベルには植物と泡のグラフィックを描いている。
Bは、ライオンの「キレイキレイ」ブランドから20年3月25日に発売。新型コロナを想定して発売したわけではなかったが、発売時は感染拡大の影響で他製品も含めて需要増による混乱が多かったという。現在は市場も商品供給も落ち着いたが、コロナ禍によりターゲットボリュームが拡大し、目標を上回る売り上げとシェアを獲得している。
ライオンによると、生活者の衛生意識は年々高まっており、手洗い回数の増加に比例して手洗いに関する悩みも増えた。開発当時の同社調べでは、20~50歳代の女性のうち、74%が手荒れなどの手肌のトラブルを抱えていた。
そのなかでも特に衛生意識が高いのは、子育てをする女性たち。彼女たちのうち約9割が「バイ菌から家族を守りたい」と考えているが、手洗いのたびにハンドクリームを塗り直すような余裕はない。そのため、手荒れを気にして思い切り手を洗えないことがストレスになっていたという。Bは、こうした手洗い回数の多い人たちに対して、「手のトラブルをできるだけ気にすることなく、しっかり手洗いをしてほしい」という思いで発売した。
パッケージはマットな手触りの乳白色で、中央にはブランドロゴとキレイキレイファミリーのイラストを描いた。手洗い回数が多い人に対応するため、ボトルの容量は450ミリリットルとやや多め。ボトムラインにはさりげないクラフト装飾を入れた。

キレイキレイハンドコンディショニングというネーミングは、100以上の案から選んだという。「体の中で最も使用頻度の高い"手"を、手洗いしながら整える」という考えで「コンディショニング」という言葉に決めた。
ちなみに、キレイキレイのロゴをモノクロで商品に展開したのは今回が初めて。ライオンのヘルス&ホームケア事業本部ビューティケア事業部ブランドマネジャーの小西真梨氏は、「いつもは元気な色合いのキレイキレイファミリーで『殺菌・消毒で家族を守る』というイメージを表現しているが、今回はそれに加えて『うるおいバリア処方で手肌を守る』『心地よく使える』というイメージを伝えたかった。そこで、ファミリーのイラストも生活シーンに溶け込むよう、普段に比べて落ち着いたトーンにした」と話す。
ビオレザハンドは手洗いが楽しくなりそう
Q1の結果を性別・年齢別で見ると、Aは女性40代の66.7%が最も高く、次点は女性20代の56.7%だった。Bは女性30代の66.7%が最も高く、次点は男性20代と男性40代の63.3%だった。

「パッケージから感じるイメージ」(Q2)では、Aは「良い香りがしそう」が87.0%、「手洗いが楽しくなりそう」が72.0%、「高級感がある」が62.3%と続く。手洗いの時間を楽しめるように、というAの狙いが伝わっていることが分かる。

Bの場合は、「生活シーンになじみそう」が65.3%、「洗浄・殺菌成分が強そう」が58.3%、「成分が良さそう」が55.0%だった。機能性が高く、生活の場に溶け込むイメージがあるようだ。
普通の泡ハンドソープが250ミリリットルで500円だった場合、「Q1で選んだ商品がいくらまでなら買うか?」(Q3)と聞くと、Aが+11.1円、Bが+14.3円と、Bのデザイン価値が3.2円高かった。

「どこを見て買いたいと思ったか」(Q4)と聞くと、Aは、「全体の色合い」が38.4%、「花のグラフィック」が26.3%、「シフォンローズの香り」が9.8%だった。色合いや花のグラフィックが人気のようだ。

一方のBは、「全体の色合い」が61.8%、「『キレイキレイ hand conditioning soap』のロゴ」が14.4%、「パッケージの形状」が11.4%と、「全体の色合い」が半数以上を占めていた。
「色合いはかなり気を使った部分。従来のキレイキレイでは、清潔感のある白で、殺菌・消毒のイメージを伝えている。Bでは同イメージを保ちつつ、かつ『うるおいバリア処方で手肌を守る』『手肌に優しい』というイメージも伝えるため、白の中に少し暖色を混ぜた」(小西氏)
どんな空間にもなじむキレイキレイ
デザインの良いところ、悪いところを聞いた(Q5)。

Aでは、デザインに対して「おしゃれでかわいい」という感想が多かった。「フェミニンなピンクも花柄も全部がかわいい」(女性40代)、「見た目が華やかで子どもが喜んで使いそう」(女性30代)といったコメントがあった。見た目のかれんさが、手洗い時の気分を高揚させてくれるようだ。
花のグラフィックも人気で、香りのイメージにつながっていた。「すてきで良い匂いを連想する」(女性40代)などのコメントが多かった。
かわいらしさが評価される一方で、「派手すぎて我が家の洗面台に合わない」(女性60代)、「派手で生活感が出る」(女性30代)といったコメントもあった。
Bで最も目立っていたのが、「シンプルで良い」というコメントだ。「置き場を選ばない」(女性30代)、「余計な成分が入ってなさそう」(女性30代)、「"手を洗う"という機能本位で好感が持てる」(男性60代)などの意見があった。ボトルのフォルムも、「優しいイメージで使いやすそう」(女性50代)、「クラフト装飾が陶器のようで、高級感がある」(女性30代)と好評。
「ボトルのフォルムは、『うるおいバリア処方で手肌を守りつつ、殺菌・消毒してほしい』という思いから、手のひらで包み込みたくなるような柔らかなシェイプを目指した。デザインチームで最初に紙粘土の模型を作り、そこから金型を製作した。そうすることで、人の手で作ったような柔らかさを表現した」(小西氏)。同時に、通常のキレイキレイよりも手肌への優しさを想起させ、使用する際に心地よく、気分が高揚するように、ボトル底部にクラフト装飾を施したという。
Bは、Aに比べて香りや気持ちに関するコメントが少なかったが、機能性が高そうで、かつどんな場所にもなじむデザインが高く評価されていた。
「あなたはどんなタイプのハンドソープを使いたいですか」(Q6)と聞くと、「泡の出るタイプ」が82.1%、「液体タイプ」が9.3%、「固形石けんタイプ」が7.3%、「その他」が1.3%だった。泡のタイプがメジャーなようだ。
「コロナ禍で手洗いの頻度は変わりましたか」(Q7)という質問では、「手洗いの頻度は増えた」が74.4%、「手洗いの頻度は変わらない」が25.3%、「手洗いの頻度は減った」が0.3%だった。7割以上の人の手洗いの頻度が上がっていた。

2021年12月上旬、インターネットを介してアンケートを実施。有効回答数は男性150人、女性150人の合計300人。20代、30代、40代、50代、60代の各世代とも男女30人ずつ。
調査協力:クリエイティブサーベイ
(ライター 近藤彩音)
[日経クロストレンド 2022年1月28日の記事を再構成]
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