AGC、ガラスで車載LiDAR守る 樹脂カバーに対抗

AGCは車載高性能センサーLiDAR(ライダー)用のカバーガラスを開発した。硬度の高さやレーザー光の透過性などを訴求し、従来の車載LiDARで使われている樹脂製のカバーに対抗する。2022年内の量産を目指す。
AGCは「人とくるまのテクノロジー展2022 NAGOYA」(6月29日~7月1日、ポートメッセなごや)で、LiDAR向けに提案する製品群を公開した。その1つが同カバーガラスである。
車載LiDARのカバーには、LiDAR筐体(きょうたい)内の部品・部材を保護したり、レーザー光を透過しやすくしたりすることなどが求められる。同社のガラス製のカバーは、こうした点で樹脂製のカバーを上回るという。
今回開発したカバーガラスでは、汎用品に比べて硬度の高いガラスを使っている。飛び石が当たっても「全く傷がつかない」(同社の担当者)。車載LiDARでは、カバーに傷がつくと、その部分では検知ができなくなる。樹脂製カバーは傷がつきやすく、その点を気にするLiDARメーカーからの引き合いが特に多いという。
レーザー光の透過性でも、ガラスが優れる。一般的に、樹脂製カバーはレーザー光の一部を吸収してしまうが、ガラスは透過率が高い。LiDARにおけるレーザー光の波長は905ナノメートル(ナノは10億分の1、nm)や940nm、1550nmが多いが、AGCはいずれの波長にも対応できるという。
このほか、同カバーガラスは耐熱性にも優れるため、融雪・霜取り用ヒーターの装着も可能だ。LiDARを含め、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)に使うセンサーには、天候に左右されない検知機能の作動が求められる。樹脂製カバーの場合、ヒーターの熱や振動によって変形する場合があるので、ヒーターの装着は難しいという。
課題はコストだ。現状では樹脂製カバーの方が安い。ガラスは樹脂に比べて加工性が悪く、コスト高の要因になっているという。軽量性でも樹脂に分がある。AGCがこれらを克服し、同カバーガラスの普及が進めば、LiDARのロバスト(頑健)性の向上につながる。
(日経クロステック/日経Automotive 本多倖基)
[日経クロステック 2022年7月1日掲載]
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