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モスバーガー、逆張りキッチンカー戦略 狙いは住宅地

日経ビジネス電子版

モスバーガーを運営するモスフードサービスは1月29日、新業態のキッチンカー「MOS50(モスフィフティ)」の営業を開始した。1号車は東京都大田区の幹線道路沿いにある紳士服専門店「洋服の青山」の駐車場を拠点に、午前11時から午後6時まで営業する。「多店舗展開」を目指すが22年度は1ケタ台の台数にとどめ、需要やオペレーションなどの実証実験を重ねていく計画という。

キッチンカーの開業にかかる初期投資は約1000万円。客単価は通常のモスバーガーが800~1200円程度なのに対し、キッチンカーはそれよりも数百円高い1000~1500円程度を目指す。提供するハンバーガーの価格帯は430~710円と店舗に比べて高い。キッチンカー事業を担当する開発本部の樋口亮一グループリーダーは「通常の店舗よりも1度の注文・調理工程当たりの利益を高めることを目指した」とその狙いを語る。

調理・接客などに必要な基本人員は2人。メニューはハンバーガー類のみの5種類に抑えられている。パティやバンズの加熱調理は車上で行われるが、野菜類などのカットといった仕込み作業は「母店」と位置付ける近隣の路面店で済ませる。1号車の母店はキッチンカーの拠点から徒歩10分ほどの距離にある東急電鉄池上線千鳥町駅前の店舗となる。「高収益」「ハンバーガー特化」「低コスト」がモスの目指すキッチンカー展開の戦略軸ということなのだろう。

新型コロナウイルス禍で店舗から消費者の足が遠のいたことから、外食や食品の大手が相次いでキッチンカーの事業に参入している。2021年2月にはいきなり!ステーキを運営するペッパーフードサービスやデニーズを運営するセブン&アイ・フードシステムズ(東京・千代田)といった外食大手が参入。ハウス食品グループ本社は販売場所や仕込み場所、車両などをまとめて貸し出すキッチンカーレンタルサービスを同年3月に始めている。各社とも、キッチンカーがコロナ禍で旺盛なテークアウト需要をつかむ一手になると期待を寄せる。

モスの狙いも他社と同様だが、同社はキッチンカーの出店場所で先行プレーヤーとの違いを出す考えだ。従来はキッチンカーといえば人が集まるオフィス街やショッピングセンターなどに出店するのが定石だった。例えば、いきなり!ステーキのキッチンカーの22年2月度のスケジュールを見てみると、出店場所は主に江東区や江戸川区のショッピングモールや品川、汐留といったオフィス街だ。デニーズのキッチンカーも東京都心部の四谷、大手町や東京23区内にあるイトーヨーカドーなどを中心に回っているという。

競合が少ない「未開拓地」へ

しかし、樋口グループリーダーは「オフィス街を回ることは考えていない。住宅街のテークアウト需要を狙う」と語る。モスは単身世帯ではなく、ハンバーガー業態の強みが生かせるファミリー層のまとめ買い需要を狙っているとみられる。

例えばコロナ禍に入った20年春以降、モスや日本マクドナルドの客単価は上昇し続けた。三密を避けたい客がまとめ買いするニーズが出てきたと考えられる。モスの場合、21年3月期は既存店の客単価がすべての月で前年同月を上回り、22年3月期も21年12月まで4月、5月、12月を除く月で前年同月を上回っている。

こうした事情を踏まえると、住宅地を攻めるモスの戦略はキッチンカーの定石とは異なるように見えるが、競合が少ない「未開拓地」ともいえる。持ち帰りに強いというハンバーガーの商品特性もキッチンカーと親和性がある。

その一方で懸念されるのは、そもそも駅から徒歩圏内の東京都心近郊の住宅地でキッチンカーの需要があるのか、という点だ。モスは当面、キッチンカーを都内で展開するという考えを明らかにしているが、すでに都内には直営、加盟店合わせて国内最多の177の店舗(21年末時点)がある。国内で100店舗超ある都道府県は東京都だけで、駅前・駅近の店舗も多い。「店に行くより価格が高い商品ラインアップ。わざわざキッチンカーに客が集まるのかは疑問」(外食大手関係者)といった声もすでに出ている。

ペッパーフードサービスやセブン&アイ・フードシステムズもキッチンカーへの参入から1年が経過したが、両社とも配備している車両数は現在まで5台にも満たない。「スケールメリットが出せない以上、利益を大きく出すことは難しい」(セブン&アイ・フードシステムズの広報担当者)といった悩みも聞かれる。注目度の高さに反して、キッチンカーで成功を収めることは容易ではない。

モスは住宅地のキッチンカー需要というブルーオーシャンを開拓できるのか。オミクロン型の感染拡大で苦悩が続く多くの外食企業がその動向を見守る。

(日経ビジネス 神田啓晴)

[日経ビジネス電子版 2022年2月2日の記事を再構成]

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