/

「社会ありき」の経営に

SmartTimes PwCコンサルティングパートナー 野口功一氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

当たり前のことであるが、企業は売上や利益を上げることを前提に経営されている。コストなどのお金をきちんと払った上で、残ったお金を利益としてビジネスの形で活用するサイクルを回すには、自社の商品やサービスの「顧客にとっての価値」を高めることが重要だ。そして、その顧客にとっての価値を高めるためには、意欲を持って働く従業員の価値も高めていかなければならない。

近代の経営では企業価値や株主価値も重要だと言われているが、さらに最近では「社会に対してどういう価値を与えることができているか」も求められている。企業が儲けるだけでなく、そのお金を社会に還元して文化などに貢献することは、日本でも財閥系や個人の実業家が明治時代から行ってきていた。時代が進むと、企業もメセナなど社会貢献活動をしなければならないと言われるようになり、さらにCSR活動も盛んになった。しかし、それらはあくまでも企業が得た利益の中から社会へ貢献するということが中心であった。業績が好調な間は支援を行うが、悪化した途端にその規模を縮小し始めるケースも多く、継続的な活動とはいえないことも多くあった。

その後、社会貢献を自社のビジネスに絡ませて行い、企業の社会性をより高めようとするCSVという考えも出てきた。そして現在は、企業が余力で支援するのではなく、本業であるビジネスによって自然に社会に貢献する形に進化し、SDGsのようにビジネス上でどのように社会に貢献できるかを考える指標も一般的になりつつある。今までは社会貢献という名のもと漠然として行動していたことを、自社ビジネスの特性ややるべきこととの密接な関わりによって社会に貢献しつつ利益を上げられるかを考えるようになっている。またそのようなビジネス=社会貢献が企業価値に対してどのように影響があるのかを測るESG投資など、企業のビジネスが好調であればあるほど、社会貢献も同時にできるということが求められているのである。

このような考えはますます重要度を増すであろうが、実行にはハードルが高いケースもたくさんあるだろう。もともと利益だけを追求する存在であった企業が、お金以外のことも考えなければならない。さらに、余力の範囲ではなく、実際のビジネスで行うのである。そのためには、生産やコスト構造や物流など企業のバリューチェーン上で大きな変革が必要となるだろう。

このようなことが本業の片手間では実現できないのは明らかである。今や企業戦略の中心や根幹は、企業が社会に対してどのようなスタンスで、ビジネスそのものが貢献できるかに変わりつつある。従来もビジョンステートメントやミッションで社会との関わりを謳うことは数多くあった。しかし、今は企業の戦略や事業がもっと直接的に社会貢献そのものにならなければならないということに変わってきている。これは、戦略構築や企業変革のあり方も社会をテーマに作り直さなければならないということだと言える。

日本ではDXすなわちデジタルトランスフォーメーションがポピュラーになりつつあるが、もっと本質的な企業変革のあり方は、「社会に対する貢献=利益を生むビジネス」ということを中心に据えなければならない。今まではビジネスありきで、そこから見た社会との関わりというベクトルであった。しかし、これからは社会ありきで、そこから見たビジネスというベクトルで見なければならない。

[日経産業新聞2021年11月12日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経産業新聞をPC・スマホで!

スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できます。直近30日分の紙面イメージを閲覧でき、横書きのテキストに切り替えて読むこともできます。初めての方は、まずは1カ月無料体験!

日経産業新聞をPC・スマホで!

スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できます。直近30日分の紙面イメージを閲覧でき、横書きのテキストに切り替えて読むこともできます。初めての方は、まずは1カ月無料体験!

日経産業新聞

日経産業新聞購読のお申し込みはこちらから 日経産業新聞ビューアーの申し込みこちらから

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン