/

ソニー半導体、「ファーウェイ・ロス」で収益回復道半ば 

ソニーはAI処理機能を搭載した画像センサーを開発するなど、スマホ向けの次の柱の育成を急ぐ

ソニーグループの半導体事業が成長の踊り場を迎えた。米中貿易摩擦の影響で華為技術(ファーウェイ)のスマホ向け画像センサーの出荷が急減した。他の中国メーカーで取引量を確保したものの、高級機種向けの需要が落ち、収益回復は2023年3月期まで遅れる見通し。中級機種向けセンサーの加工技術を得意とする韓国サムスン電子が追い上げており、スマホ市場再攻略は道半ばだ。

「22年3月期は収益回復がかなわない」。半導体事業を担うソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長は3日、報道陣向け説明会で語った。22年3月期の半導体事業の営業利益は前期比4%減の1400億円と、2期連続で減益の見通し。背景にあるのが、米中摩擦に端を発したスマホ市場の構造変化だ。

ファーウェイ失速でスマホ市場が変化

米IDCによると、ファーウェイのスマホ出荷台数のシェアは、21年1~3月に4%台と6位以下。米国政府から禁輸対象に指定された影響で、2位だった前年同期から約14ポイントと大幅に下落した。代わりにサムスン、米アップルに加え、小米(シャオミ)、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)の中国3社がシェアを伸ばした。

ソニーは画像センサー市場で世界シェア(金額ベース)の半分を握る。近年はスマホカメラの高画質化やレンズが1台で複数使われる「多眼化」が進み、高級機種を得意とするアップルやファーウェイは得意先だった。

ファーウェイの失速で、高級機種向けの高画質センサーの需要が落ち込んだ。代わりに中国3社と取引量を増やしたが、いずれも中価格以下のスマホを得意とする。中価格帯のスマホはセンサーの単価も下がるうえ、消費者の支持を集めやすい高画素の技術を求められる。

米中摩擦のあおりで突如生まれたスマホ市場の「ニューノーマル(新常態)」で、巻き返しを狙うのはサムスンだ。年3億台近いスマホを出荷し、大半で自社製の画像センサーを載せる。安定需要の基盤があるうえ、台頭する中級機種で人気の高画素センサーに強い。

画像センサーの世界シェアは、5割を占めるソニーを2割のサムスンが追い上げる。サムスンは高画素のセンサーに必要な微細加工技術を得意とする。清水社長は「(サムスンに比べて)高画素では後れを取っているのが実態」としつつ、現在開発中のセンサーでは「高画質品で培った技術を使い、新たな価値をつける」と強調した。

サムスンは半導体メモリーやCPU(中央演算処理装置)を含む巨大な生産設備を持つ。ソニーは24年3月期までの3カ年の中期計画で、半導体事業の設備投資で7000億円と前中計から2割増やす計画だが、「微細加工の重要性が増せば、投資余力で勝るサムスンが優位に立つ可能性もある」(調査会社)との指摘もある。

報道向けの説明会に出席したソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長(3日)

AI画像センサーで継続課金型モデルの構築狙う

変動が激しいスマホ市場の依存度を下げるのにも時間がかかりそうだ。成長市場に掲げる車載向けの画像センサーは年50%の売り上げ成長率が続くものの、規模はまだ小さい。ソニーが試作する電気自動車(EV)「ビジョンS」とも連携し、暗い所でも正確に読み取れる高性能センサーを開発し、欧米自動車メーカーに売り込む考えだ。

新たな事業モデルにも挑む。売り切り型だった画像センサーのビジネスで、継続的に課金できるリカーリング型を構築する試みだ。具体的には開発した人工知能(AI)の処理機能を搭載した画像センサーを活用する。通信先のクラウド上だけでなくセンサー側でもデータ処理ができ、通信量を抑えられる。

例えば、小売り向けでレジなしのキャッシュレス決済店舗用のカメラに使ったり、都市の監視カメラ機能を進化したりできる。6月にはローマ市でAI画像センサーを搭載したスマート監視カメラの運用を始める。バス停の混雑状態を検知してバスの最適な運行につなげたり、信号無視した人物を検知してライトを照射して警告したりできる。

画像センサーを軸とする半導体事業は、ソニーの経営再建時に「成長けん引領域」と位置づけられた。20年3月期には売上高で1兆円を超え、売上高営業利益率は22%と高収益で貢献した。この間、熊本地震で工場が被災するなど苦しい時期もあったが、ソニー復活を支えてきた。

スマホ市場の環境激変という難局に直面するが、車載分野やAI画像センサーなどの新しい成長分野を切り開けるかも試される。

先端半導体の国内生産、資金面で国の支援が必要

先端半導体を巡っては、政府が国内誘致を進めるための政策原案を策定するなど、経済安全保障の観点からも注目される。

ソニーも大部分を外部企業に生産委託するロジック半導体で調達が難しくなっている。安定確保へ合弁も含む自社生産に乗り出す妥当性を問われた清水社長は「(単独では)技術、コスト両面で難しい。一般論として、国の支援が得られる意味が大きい」と述べ、資金面で国の支援が必要との見方を示した。

(伴正春)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン