SKY-HI ソロのリリース頻発でBMSGの自由度を担保
連載 SKY-HI「Be myself, for ourselves」(37)
前回の「SKY-HI BMSGがリリースし続ける理由、ソロ・空気…」に引き続き、『日経エンタテインメント!』2022年3月号(2月発売)から掲載する。2022年の年明けからSKY-HI率いるマネジメント/レーベルBMSGは、SKY-HI自身やNovel Coreだけではなく、Aile The Shotaやedhiii boiといった「THE FIRST」参加メンバーまで、ソロアーティストの音源を立て続けにリリースしている。[「THE FIRST」についてはこちら]

予想以上に早かった彼らの展開。その背景にあったものとして、SKY-HIは3つの事柄を挙げた。1つめの「彼らが仕上がっていた」ことと、2つめのリリースの際のソロとグループの「スケール感の違い」については前回、語ってもらった。今回は3つめの「空気」について詳しく聞いた。
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BMSGの掲げる理念に共鳴する人に恵まれて
「3つめは、『空気』です。BE:FIRSTとしてデビューしなかった『THE FIRST』の参加者に対する空気感は、センシティブに見ていました。BMSGは、『B-Town』というファンコミュニティーを運営しており、そのなかの『Architect』というコースでは、制作の裏側や意図、エピソード、クローズドでしか出しにくいようなクリエイティブにまつわる率直な話を明かしているんです。BE:FIRSTではないメンバーたちの情報をそこで出しながら、彼らに対する情報のニーズや彼らの今後の活動に対する皆さんの声と慎重に向き合っていきました。
それこそ韓国のオーディション番組からデビューを果たせなかったメンバーのその後の動向や世間での捉え方なども、事例として注視しました。オーディションで結成したグループと関連グループのリリースが近いと、ファンからネガティブな反応があること、さらに言えば、スタッフからは、『THE FIRST』中に僕自身がソロの楽曲をリリースすることすらマイナスに作用する可能性もあるかもしれないという意見もありました。
実際には何をしていても楽曲は作れるし、リリースもできるんです。でも、『(SKY-HIは)オーディションに集中してない』という印象を持つ人も出てくるかもしれないと。
その話を聞いたときにまず感じたのが、各自がどんどん楽曲を作ってリリースし、はたまたコラボをするような活動を好意的に受け取ってもらえるムーブメントにしたいなあと。
単にオーディション番組そのもののブームではなく、BMSGそのものが生み出すものが面白がられるムーブメントになれば、それがいつしかカルチャーへと育っていく。ありがたいことにBE:FIRSTの『Gifted.』リリース前に、『THE FIRST』を応援してくれた方々が、BMSG全体をサポートしてくれる空気が感じられました。
だからこそ、『THE FIRST』の最終メンバーに残っていたAile The Shotaのデビューに懸念はなかったし、合宿メンバーにも入っていなかったedhiii boiがこうして世に迎え入れられたのは、その極致でしょう。会社の社会的信用とは別の話ですが、少なくとも『THE FIRST』やBMSG、僕自身は、応援してくれる方々からアーティストに対する考え方への信頼をおよそ勝ち得ることができた自信があり、それを空気として感じ取れた。だから2人を世に出すことができたんです」
事務所の枠を越えた「ユナイト」をしたい
オーディションやボーイズグループは世間の話題に上りやすい。その状況はBMSGの認知度こそ上げられるかもしれないが、BMSGの持つビジョンや音楽性とはかけ離れた方向に進んでしまう危惧もあった。しかし、こうしてリリースを連発することによって、BMSGは自身の進むべき道を、進みたかった方向に、非常に鮮やかなステップで歩み始めたように見えた。
「世間に『BE:FIRSTの事務所』と捉えられることは、会社としての自由度も薄まってしまい、一長一短の『短』が多くなりかねません。ほかならぬBE:FIRSTにとっても。BMSGの最初のアーティストはNovel Coreで、その次にボーイズグループであるBE:FIRSTがデビュー。その後、Aile The Shotaやedhiii boiを世に出せたのは、打ち出しとして完璧でしたし、そのバランスは本当に意識した部分です。
今の時代、目から入る情報を無視することはクリエイティブではなく、それゆえに意識的に顔を出さないアーティストも生まれている状況です。そのなかで、僕らBMSGのソロアーティストって、Novel CoreにしてもAile The Shotaにしても、ビジュアル的にも非常にアイコニック。同時にBE:FIRSTには、アイドル性も保ちながら高い音楽性も併せ持つボーイズグループになることを求めています。ソロだからここだけが売り、グループだからここだけが売りというのではない。そんな彼ら全員が1つのクルーとして絡み合っていったら、すごく面白いことが起きるはずです。
僕、マーベル作品が大好きなんですが、同じマーベルなのに、作品によってコメディだったりヒューマンドラマだったりサスペンスだったりドキュメンタリーだったりする。めちゃくちゃ面白くないですか? それでいて数年に1回、全キャラクターが勢ぞろいする作品があって……あのエクスタシーって半端じゃないです。
そんな形態をマネできるのかと思うでしょうが、作れます。嘘をつかないことを大前提にすれば、実際の人間のほうがよっぽどドラマがあると僕は思っているんです。だから、BMSGに所属するみんなには、自分に嘘をつかず、思うがままに進んでほしい。さらにBMSGだけでなく、事務所の垣根を越えていろいろ一緒にできたら面白いなと思うんです。日本の芸能の歴史において、事務所の枠を越えたユナイトは多くはありませんが、なくていい枠組みをなくすことはBMSGのミッションの1つなので、将来的にはやっぱりやりたいです」
【お知らせ】NIKKEI STYLEでご愛読いただいてきました連載SKY-HI「Be myself, for ourselves」ですが、第38回「SKY-HI Stray Kidsとの共作、キャリア関係なく『仲間』との思い」から、日経エンタテインメント!特設サイトへ移転し、掲載しています。そちらでもどうぞよろしくお願いいたします。 https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00592/00036/

【過去の記事一覧と「BE:FIRST」についてはこちら】
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2022年3月号の記事を再構成]
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