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京大発核融合スタートアップ 日揮などから13億円調達

日経ビジネス電子版

核融合炉の主要装置を開発する京都大学発スタートアップの京都フュージョニアリング(京都府宇治市)が、日揮や産業革新投資機構(JIC)傘下のファンドなど6社から約13億円を調達した。官民ファンドや大手が出資を決めたことで、日本の核融合ビジネスが本格的に動き出す。

◇   ◇   ◇

核融合炉の主要装置を開発・製造する京都大学発スタートアップ、京都フュージョニアリングがプラントメーカーの日揮や産業革新投資機構(JIC)傘下のファンドなど6社から計13億3000万円を調達した。核融合は二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギーとして各国で注目が高まっている。英国は2021年に実験炉の建設計画を打ち出し、米スタートアップには巨額の資金が流入する。国内でも核融合ビジネスが本格的に動き出す。

日揮の山田社長「技術シナジーを模索する」

第三者割当増資により資金調達した。引受先は、産業革新投資機構傘下のJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、日揮のベンチャーキャピタルであるJGC MIRAI Innovation Fund L.P.のほか、DBJキャピタル、ジャフコグループ、コーラル・キャピタル、大和企業投資の計6社。各社は、カーボンニュートラルが世界の共通課題となるなか、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーである核融合技術に着目した。

日揮の山田昇司社長は「核融合を実現するための重要な役割を果たすことができる会社。日揮グループとの技術シナジーも模索したい」とコメント。JICベンチャー・グロース・インベストメンツの桑原優樹プリンシパルも「優れた技術をグローバルに展開できるポテンシャルがある」と期待を寄せる。

京都フュージョニアリングの強みは、核融合の第一人者として知られるCTO(最高技術責任者)の小西哲之・京大エネルギー理工学研究所教授を中心とする豊富な研究者だ。小西氏は、日米欧中など7つの主要国・地域が参画する共同プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER)」に、事業開始初期の1989年から主要装置「ブランケット」の設計者の1人として参画する。同社は別の基幹装置であるプラズマ加熱に用いる「ジャイロトロン」と呼ばれる主要装置の研究者も抱えており、核融合の世界で名の通った研究者がそろっている。

同社は、ブランケットやジャイロトロンといった主要装置を設計、開発し、核融合炉を手掛けるメーカーに供給している。2021年秋には、英原子力エネルギー庁(UKAEA)が25年に着工する実験炉への装置納入を決めた。23年までにジャイロトロンを2本納める見通しだ。ジャイロトロンの受注額は1本あたり数億円となる。

増資に加え、政府系金融機関やメガバンクとの融資契約も近く締結する見通しだ。研究開発投資を加速させ、21年に新設した英国の現地法人に次いで、米国拠点の開設も視野に入れる。

米スタートアップには2000億円超が投じられた

カーボンニュートラルの潮流を受け、欧米では10年代半ばから、核融合の関連ビジネスが成長し始めた。ビル・ゲイツ氏が出資する米マサチューセッツ工科大学(MIT)発のスタートアップ、米コモンウェルス・フュージョン・システムズが21年に2000億円超を調達し、同年には米ヘリオン・エナジーも2000億円超を調達した。海外では日本とケタ違いの投資が相次いでいる。

数年ほど欧米に後れを取る日本だが、京都フュージョニアリングへの今回の出資を機に核融合ビジネスが盛り上がりそうだ。岸田文雄政権は、クリーンエネルギー戦略の重点分野として水素・アンモニアとともに核融合を挙げている。今夏をめどに核融合の研究開発に関する戦略を策定、CO2排出を実質ゼロにするとした50年までの道筋などを策定するとみられる。

核融合発電は「地上の太陽」と呼ばれる。ドーナツ形の真空容器の中に、セ氏1億度を超える超高温の重水素と放射性物質であるトリチウム(三重水素)を閉じ込め、原子をくっつけることでエネルギーを生み出す。酸素がない空間で生じている反応のため、CO2は排出せず、核のゴミも出ない。カーボンニュートラルに貢献するクリーンエネルギーとして期待が高まる。

核融合研究は、かつて日本が世界をリードした原子力の研究がベースとなっている。京都フュージョニアリングが、日本で核融合関連の研究者を集められるのは、数十年にわたる原子力研究の蓄積が今も国内にあるからだ。原子力事業を手掛けてきた三菱重工業や東芝といった大手の技術者も同社に転じている。京都フュージョニアリングの長尾昂最高経営責任者(CEO)は、「この数年が勝負になる。欧米を中心に構築されつつある核融合関連市場に食い込むため、さらなる投資を呼び込み、事業拡大を推進する」と話す。

(日経ビジネス 中山玲子)

[日経ビジネス電子版 2022年2月2日の記事を再構成]

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