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日野自動車エンジン不正、03年以前から 対象56万台に

日野自動車は2日、3月に公表したエンジン不正について、少なくとも2003年以前から行われていたと発表した。従来は不正開始時期について16年秋以降と説明していたが、より長期間にわたって不正が続けられていた。対象車両も判明しただけで09年以降で56万7千台にのぼり、これまで公表していた約12万台から大幅に拡大する。16年、国土交通省から求められた排ガスや燃費試験を巡る実態調査に対して虚偽報告していたことも明らかにした。

原因究明などに向けて3月に設置した外部の弁護士らによる特別調査委員会(榊原一夫委員長)が2日発表した報告書で新たな不正が明らかになった。現行車種では中型バスなど8車種の不正が新たに判明、2日から出荷を止めた。従来の不正対象は8車種だった。国内で出荷できるのは小型トラックのみとなり、21年度の国内販売実績ベースで約5割の車両が出荷できなくなる。

日野自から2日に報告を受けた国交省は建機用も含めた現行エンジン14機種のうち、12機種で排ガス不正があったと明らかにした。そのうち4機種は基準に適合しておらず、型式指定の取り消しも検討する。同省の担当者は同日、日野自への立ち入り検査について「迅速に行いたい」とした。

報告書では過去のエンジン不正も明らかになった。排ガスについては03年に導入された新たな環境規制対応時からの不正が判明。また燃費についてはトラックなどに税制優遇が設けられた05年以降の多くの車種で不正が見つかった。国が定めた試験方法に従わなかったり、燃費や排ガスの数値が実際よりよく見えるようにデータを改ざんしたりしていた。調査委は不正が続いていた原因について、日野自の「上にものが言えない」体質が背景にあると指摘した。

また日野自が国交省に対して過去に虚偽報告をしていたことも分かった。三菱自動車の燃費不正の発覚を受け、国交省は16年4月に日野自を含む車メーカー各社に燃費や排ガス試験で不適切な事案がないか、調査と報告を求めた。これに対して日野自は「問題ない」と回答していたが、実際はエンジン試験の担当者がデータを書き換えることなどで問題がないように装っていた。

不正開始時期が大幅に前倒しされたことで、今後は現経営陣に加え、過去の経営陣の責任も焦点となる。今回の報告書で認定された不正は03年の規制対応からだが、榊原氏は「それ以前から不正があった可能性もある」と言及。一方で、過去も含めて経営陣の直接的な関与は「認定できなかった」(榊原氏)とした。

小木曽聡社長は会見で、自身や旧経営陣の責任について「報告書の内容を精査して厳正に対処する」と語り、具体的な対応への明言は避けた。

また小木曽社長は不正の温床となった組織風土の改善やガバナンス(企業統治)強化について、「3カ月後をメドに具体策をまとめる」と語った。

親会社であるトヨタ自動車が日野自に今後どのような対応を求めるのかも、今後のもう一つの焦点だ。トヨタは01年に出資比率を現在の50.1%まで高め、日野自を子会社化した。その後は経営幹部を相次いで送り込んでおり、01年以降は4代続けてトヨタ出身者が社長に就いた。子会社化以降、生え抜きの社長経験者は不正発覚を受けて6月に退任した下義生前会長のみ。今の小木曽社長もトヨタ出身だ。

業績への打撃も深刻だ。日野自はリコール(回収・無償修理)や税制優遇を受けた分の追加納付などで特別損失が膨らみ、22年3月期の連結最終損益は847億円と過去最大の赤字だった。不正対象の車の出荷再開が見通せないとして、23年3月期の業績予想は開示していない。

約4割のシェアを持つ大中型トラックの国内販売が半減するなど販売が落ち込み、22年4~6月期の連結決算は純利益が前年同期比89%減の7億2300万円だった。今回新たに発覚した不正により2万900台の追加リコールも迫られ、業績影響はさらに拡大する見通しだ。

また北米でも不正が拡大する火種を残す。北米市場向けエンジンの排ガス試験対応が適切でなかった可能性があり、20年12月に北米でのトラック生産を止めた。その後、米カミンズからエンジン供給を受けて生産は再開したものの、不正がなかったかどうか米司法省の調査が続いている。今回の調査委の報告は国内が対象で、北米での問題は調査対象外だ。今後、米当局の調査で不正が認定されれば多額の賠償問題などに発展する可能性もあり、経営の先行きが見通せない状況だ。

(山田遼太郎)

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