古いコロナ変異型、米国の野生シカで流行 変異蓄積も
米コーネル大学の研究チームは、新型コロナウイルスのアルファ型などの古い変異型が米国の野生のオジロジカで広がっていたことを明らかにした。人から感染し広がったとみられ、古い変異型が人で流行しなくなった後もシカでは流行が続いていた。それ以外の変異型も複数見つかっており、動向を監視する必要があると指摘している。

2020年と21年の狩猟期(9〜12月)にニューヨーク州で捕獲された約5500頭のオジロジカについて、コロナ感染の有無や変異型の種類を調べた。PCR検査で20年の17頭、21年の583頭からコロナウイルスのRNA(リボ核酸)が検出された。このうち164頭のゲノム(全遺伝情報)解析でアルファ型、ガンマ型、デルタ型という3つの「懸念される変異型(VOC)」が見つかった。
シカからアルファ型やガンマ型が検出された時点で、これらの変異型はニューヨークの人々の間で感染が報告されなくなってから4〜6カ月がたっていた。人での流行が過ぎた古い変異型が、野生のシカの間では残っていたことになる。
人からオジロジカへの感染は複数回起こり、その後にシカからシカへと広がったとみられる。人からシカへの感染は狩猟や餌付け、排水などを介している可能性があるという。人で流行していたウイルスと比べ、シカから採取したウイルスには多数の変異が蓄積していた。シカの間で感染が広がりやすいように進化したとみられる。
人と同じように、シカでも古い変異型がいずれ新たな変異型と置き換わるのかはまだ分からない。シカを捕食する肉食動物など他の野生動物に広がる恐れもあり、今後の研究が必要だ。コーネル大のディエゴ・ディール准教授は「シカから人へと再び感染したり、他の動物に広がったりする可能性を追跡するため、ウイルスの監視を続けることが重要だ」と指摘する。
調査結果は米国科学アカデミー紀要に掲載された。
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