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三菱電機、杉山社長が引責辞任へ 検査「組織的不正」

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三菱電機は2日、鉄道用装置の不正検査問題に関する記者会見を開き、杉山武史社長が組織的な不正行為と認めたうえで引責辞任を表明した。鉄道車両向け空調装置での不正検査は35年以上にわたって続けられた。経済発展に不可欠な生産革新やインフラの高度化を支えてきた大手企業で不正が繰り返されたことは、日本のものづくりへの信頼に打撃となりかねない。

「近年、労務や不正アクセスなどの問題が発生し、信頼が毀損していることに責任を痛感している」。東京都内の三菱電機本社で開いた会見で杉山社長はこう述べた。「私が社長を辞し、新たな体制で信頼回復に取り組むことが必要と判断した」。2日午前に取締役に申し出たといい、7月中をメドに後任を選ぶ。

長崎製作所(長崎県時津町)での不正検査は6月14日に社内調査で判明。少なくとも1985年ごろから空調装置で行われ、出荷前検査の際、顧客との契約とは異なる方法で検査したり、検査を省略したりしていた。鉄道のブレーキなどに使う空気圧縮機でも15年ほど前から続いていた。

過去に出荷した空調装置約8万4600台(納入先は約80社)、空気圧縮機約1500台(約20社)が不正検査の対象となった可能性がある。不正検査では、架空データを自動で生成する専用プログラムが使われたことが明らかになっている。杉山社長は「組織的な不正行為だったと認めざるをえない」と述べた。

ただし、会社側は安全性には問題はないとの考えを強調した。

木目田裕弁護士を委員長とする調査委員会を置く。品質不正がないか全社レベルの調査を実施する方針だ。鉄道車両用空調装置等については9月に結果を公表する。これまでに長崎製作所の従業員のうち約160人に調査したところ、少なくとも品質管理や設計部門の課長クラスは不正行為を把握していたという。

三菱電機では相次いだ品質管理上の不適切行為について、2016年度以降3回社内点検を実施したが、長崎製作所での不正検査は見つけられなかった。企業風土の問題を問われた杉山社長は「顧客との関係より自分たちの論理を優先する業務の進め方だったということが問題だと思っている」と述べた。

三菱電機は1960年代に国産初の集積回路(IC)などを開発。現在も白物家電から防衛用レーダー、宇宙衛星まで手広く製造、鉄道車両向けの電機品では国内で6割のシェアを持つ。工場を効率化するファクトリーオートメーション(FA)の分野でも強い。20年の特許の国際出願件数は企業別で世界3位に入った。

その陰で今回発覚した不正は続いた。2000年代には牛肉偽装や耐震偽装が社会問題となり、17~18年には排ガス検査不正が車業界を揺るがした。それでも三菱電機で自浄作用は働かなかった。梶山弘志経済産業相は2日の記者会見で「不適切な検査を長年実施してきたとすれば、日本のものづくりへの信頼を大きく傷つけかねない問題で大変遺憾」と述べた。

杉山社長は縦割り組織が問題の一因との認識を示し、「本来どこかの部門で問題が出れば、別の部門も自らをただすべきだ。自分たちで起こっていることと教訓にできず、部門ごとの連携ができなかった」とした。

三菱電機グループでは14~19年、過労が原因の自殺などで社員6人が労災認定を受けた。19年には新入社員が自殺し、のちに労災と認められた。杉山社長は「上司と部下、同僚などで情報共有がうまくできていなかったのが大きな要因で、品質問題と根っこの部分では同じだ」と述べた。

6月29日の定時株主総会の時点で不正検査について経産省にも報告していたが、総会では明らかにしなかった。杉山社長は「取締役会で議論し、不十分な状態で話すと不安感を与えてふさわしくないという結論だった。ただ反省すべき点がある」と話した。

同社は今回の不正検査問題を総会の日の夜に公表したが、記者会見を開いて説明したのは2日が初めて。冒頭、杉山社長は「鉄道事業者や利用者に多大なるご迷惑と心配をかけており、自ら発見、是正できなかったことは誠に申し訳ない。深くおわび申し上げます」と陳謝した。

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