ANA純利益600億円に上振れ 23年3月期、JALは下方修正
旅客需要の期初見通しで差

ANAホールディングス(HD)は2日、2023年3月期の連結最終損益が600億円の黒字(前期は1436億円の赤字)になりそうだと発表した。従来予想から200億円上方修正した。水際対策の緩和で国際線の需要が回復し、燃料費などのコストが計画を下回る。日本航空(JAL)は国内線を中心にANAよりも強気に見ていた旅客需要の想定を引き下げ、業績予想を下方修正した。

ANAHDは連結売上高の見通しを前期比68%増の1兆7100億円、営業損益は950億円の黒字(同1731億円の赤字)とした。それぞれ100億円と300億円の上方修正だ。会社の想定と比べて22年10~12月期の売上高が100億円上回り、営業費用が200億円下回ったことを反映させた。
中堀公博・グループ最高財務責任者(CFO)は「北米線とアジア路線の需要が想定を上回った」と話した。コスト面では燃油や為替の市況変動で約70億円、需要に応じた貨物専用便の減便などの費用削減で約130億円を抑制した。

一方、JALは通期の最終損益(国際会計基準)の予想を250億円の黒字(前期は1775億円の赤字)と、従来予想から200億円引き下げた。売上収益は1兆3580億円と従来予想を460億円下回る。うち260億円を国内線の旅客収入、110億円は貨物郵便収入の下振れが占める。
菊山英樹CFOは「ビジネス需要の戻りが想定ほど早くない」と話し、コロナ禍を受けたリモート会議の普及などが影響している可能性があるとの見方を示した。政府の観光振興策「全国旅行支援」が年明け以降に再開するとの発表が遅れたことも、観光需要の回復の遅れにつながったとみている。
JALはANAと比べて需要の水準を高めに想定していた。2日に1~3月期の国内線の旅客数の想定はコロナ前の85%、国際線は54%に引き下げた。従来はそれぞれ95%と60%だった。ANAは22年10月末に国内線(ANAブランドのみ)がコロナ前比85%、国際線は同55%との想定を示していた。

両社とも業績は回復している。ANAHDの22年4~12月期の最終損益は626億円の黒字(前年同期は1028億円の赤字)、JALは163億円の黒字(同1283億円の赤字)だった。ともに4~12月期としては3年ぶりの黒字となった。JALは今期末の配当予想を20円(従来予想は未定)に修正し、20年3月期の中間配当以来の配当を見込む。ANAHDは無配予想としている。
もっとも、今期は政府がコロナ対策として航空機燃料税の軽減など総額700億円の支援を航空業界に行っているほか、燃料価格の高騰を受けた燃料費の補助なども実施している。中国路線などの動向にはなお不透明感もあり、海上物流の混乱などで高騰していた航空貨物輸送の単価も下落基調だ。本来の稼ぐ力を取り戻すにはなお時間がかかる。