アフィリエイト広告への懸念
奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)
まだ2022年もひと月がたったばかりだが、今年は企業の行き過ぎた広告手法に対する問題提起が注目されている。そのうちの1つとして業界で大きく注目されているのは、いわゆる悪質なアフィリエイト広告への対策の動きだ。
アフィリエイト広告とは、成果報酬型広告とも呼ばれるもので、個人も含めたウェブサイトの運営者(アフィリエーター)が代理店やアフィリエイト事業者などの仕組みを活用し、広告主の商品をウェブサイトやネット記事で宣伝し、広告主のサイトへの送客数や契約数に応じて報酬を得るモデルだ。1990年代には誕生しており、ネット広告の中で最も歴史の古い手法の1つと言える。

ただ、近年はアフィリエーターが成果報酬を求めていくなかで、アフィリエイト広告の内容が虚偽や誇大な内容を含むものになっていたり、広告と明示せずに実際に商品を使ったかのように見せたりする問題点などが指摘されている。
そのため、消費者庁は有識者による検討会を開催。アフィリエイト広告に対し広告主は内容について責任があり、管理する必要があるといった報告書案が今年1月に公表された。
また、同じく今年1月には、日本マーケティング・リサーチ協会が「非公正なNo.1調査への抗議状」という抗議文を公表したことも注目されている。これは一部の調査会社が、企業が希望する結果を恣意的につくり出す調査ビジネスを展開していることで、恣意的にNo.1をうたった広告が頻発していることに対する問題提起だ。
当然、自社調べでの安易なNo.1表記は問題になるが、そこをくぐり抜けるために調査会社をはさんで、そうした確信犯の調査会社と連携して不正行為を働いているわけだ。
いわゆるステルスマーケティングややらせのように手法自体に倫理的な問題を抱える行為に対して、アフィリエイト広告やNo.1調査というのは、手法自体には違法性や倫理的な問題があるわけではない。ただ、その手法を悪用する事業者が出てくることにより、社会的な問題を生んでいるというのが、これらの問題の対応の難しいところだ。

今回、消費者庁のアフィリエイト広告等に関する検討会が報告書をとりまとめていく過程で、新経済連盟が懸念と要望を表明したように、手法の多様化や広告媒体となるメディアの数の急増により、広告主自身が全ての広告や手法を把握しきれない時代になった現実もある。ただ、だからと言って知らなかったでは済まされないのが現在のSNS(交流サイト)社会でもある。
特に有名な企業であれば企業であるほど、こうした手法を使っていることが明らかになると、SNS上で批判されたり炎上することにもなる。漫画を違法に公開した海賊版サイト「漫画村」が問題になったときにも、複数の企業がそうとは知らずに漫画村にバナー広告を出し続けていたことで大きな批判をあびることになったのが象徴的だろう。
皆さんの企業も知らずにそうした危ない手法に手を出していないか、ぜひこのタイミングで振り返っておくことをおすすめしたい。
[日経MJ2022年2月4日掲載]