気候変動でイネ収穫量を自ら制御 甲南大学、RNA特定
甲南大学の建石寿枝准教授らは気温の上昇に伴ってイネの収穫量を変化させる遺伝子を特定し、この遺伝子を制御するRNA(リボ核酸)を発見した。夜間の温度に応じてイネが土壌から栄養分を取り込む能力を制御する。このRNAを農薬に応用し、農作物の遺伝子を組み換えなくても温暖化などの気候変動に対応できるようにする狙いだ。

研究チームはイネが土壌から栄養分を取り込む際に働く「高親和性硝酸トランスポーター」という遺伝子に着目。この遺伝子からつくられるメッセンジャーRNA(mRNA)に選択的にくっつく小さなRNA(小分子RNA)を発見した。このRNAはmRNAにくっつくと高親和性硝酸トランスポーターの働きを抑え、イネの成長を阻害する。
このRNAが「温度センサーの役割を果たし、温度に応じて構造を変えることでmRNAとの結合のしやすさが変わる」(建石准教授)という。セ氏25度ではこのRNAは折りたたまれてmRNAに結合しづらいが、32度付近からほぐれて結合しやすくなる。つまり高温下では高親和性硝酸トランスポーターが働きづらくなり、イネの成長が阻害される。
近年、温暖化などで農作物の収穫量が世界的に変化しているが詳しい仕組みはわかっていない。建石准教授は「農作物の小さなRNAを制御する『核酸農薬』ができれば、遺伝子組み換えに頼らない気候変動対策になる」と話す。研究は中国の南京農業大学と共同で手掛けた。