Wi-Fiルーター便利機能 複数つなぐなら「6」で
最新パソコンスペックガイド ネットワーク編(下)
ネットワーク環境の最新事情を解説する連載の2回目。今回は最新Wi-Fiルーターの便利な機能を紹介しよう。
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現在、インターネットはIPv4(アイピーブイフォー)とIPv6(アイピーブイシックス)という2つの通信プロトコルを用いて接続する。接続するサイトやサービスによって、利用するプロトコルが異なる。IPv4で接続する場合、プロバイダーがネットに接続できるグローバルIPアドレスを1つ割り振り、それを基に接続する。だが、IPアドレスが1つだと、複数の機器をネットに接続するときにIPアドレスが不足してしまう。そこで、ルーターを用いてグローバルIPアドレスをローカルIPアドレスに変換して分配することで、複数の機器を同時にネット接続できるようにする(図1)。

一方IPv6は、各端末にインターネットで利用できるIPアドレスが割り振られるため、ルーターでIPアドレスの変換はせず通信のみ分配する。これを「IPv6パススルー」機能と呼ぶ。現在販売されているルーターのほぼすべてがこの機能を利用でき、この機能を「IPv6対応」とうたう製品も多い。
Wi-Fiルーターを購入する際には「無線引っ越し機能」にも注目したい。古いルーターから新しいルーターに乗り換える際、古いルーターの設定を新しいルーターに引き継ぐもので、新ルーターに接続するパソコンのSSIDやパスワードを設定し直す必要がない。無線LAN機器同士の暗号設定を簡単に行うための規格である「WPS」を使うためメーカーを問わず利用できる(図2)。

接続台数が多いとWi-Fi 6が威力を発揮
接続台数が多い環境で便利な機能を持つルーターもある。バンドステアリングもその技術の1つ。周囲の電波状況や通信速度などに応じて、端末が接続する周波数帯を切り替える(図3)。

トライバンドは2.4ギガヘルツ(ギガは10億、GHz)帯と5GHz帯に加えて、もう1つ別の5GHz帯を設け、接続台数の多い環境でルーターの負荷を減らす。バンドステアリングと併用できる製品では、通信の渋滞を減らせる(図4)。

ビームフォーミングは、Wi-Fiルーターがパソコンやスマホの場所を特定し、その場所に向けて効率の良い電波を送信する仕組み。対応機器のみで利用できるが、Wi-Fi 6対応機器のほとんどが対応する(図5)。

MU-MIMOはビームフォーミングを使い、複数の機器と同時にデータ通信できる仕組み。従来の通信は直列型だったが、MU-MIMOは並列型の一斉通信。Wi-Fi 6では接続台数が最大8台に増え、アップロードも対象になった(図6)。

メッシュネットワークは、Wi-Fiルーターを複数台設置し、網目状に電波を張り巡らせることで、家のどこにいても快適に通信できる環境を作る技術(図7)。これまで、同一メーカーの同一の製品群でしか構築できなかったが、イージーメッシュという統一規格に対応したルーター同士なら構築できるようになった(図8、図9)。



IPv6 IPoEの対応も重要に
プロバイダーとの接続方式にも留意したい。従来のPPPoE(ピーピーピーオーイー)という接続方式では、電話回線網とプロバイダーをつなぐ網終端装置が混雑すると、速度が低下しやすいという欠点があった。IPv6 IPoE(アイピーオーイー)と呼ばれる新しい接続方式では、網終端装置の代わりに通信容量の大きいゲートウエイルーターを経由するので、混雑時でも速度が低下しにくい。通信が高速になるうえ、認証IDやパスワードの入力などが不要になる(図10)。

IPv6 IPoEの環境下では、IPv6でIPv4への通信もできるIPv4 over IPv6も利用でき、IPv4の高速化が図れる(図11)。なお、前出の「IPv6対応」と「IPv6 IPoE対応」はまったくの別物なので注意したい。また、これらの機能を使うにはプロバイダーとのオプション契約が原則として必要だ。

最後に、QoSとブリッジモードを解説する。QoSは通信に優先順位を付ける機能。動画やゲームなどのデータを優先的に処理することで、通信状態を安定させる効果がある(図12)。

ブリッジモードは、ONU(光回線終端装置)にルーター機能がある場合に利用するモード。Wi-Fiルーターのルーター機能をオフにすることで、ルーター機能が二重になることによる速度低下を防止できる(図13)。

(ライター 田代祥吾)
[日経PC21 2021年11月号掲載記事を再構成]
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